「お、はよう、…ハリー」

多少ぎこちないが、ちゃんと挨拶を交わせた事にジュリアはホッとした。


「僕に挨拶はないのかい?」

ムスッとするロンにジュリアは慌てておはようと言った。


「昨日はよく眠れた?」

ハリーはいつもと変わらない優しい笑顔をジュリアに向けた。


「うん…」

「嘘、目が充血してるよ」

「え、?さっき冷やしたのに、」


ジュリアが慌てて目を隠そうとすると、ハリーがその手を掴んだ。


「冷やしたって事はやっぱり充血してたか腫れてたんだね?」


鎌を掛けられた事に気づき、ジュリアは少し拗ねたような表情を浮かべた。



「ズルいわ、ハリー」

ジュリアの表情を見てハリーはアハハッと柔らかく笑った。


「充血なんてしてないよ、今日も綺麗な蒼空色だよ」

ハリーはジュリアの顔を覗き込み、そっと瞼を撫でた。

「あのねぇ、お二人さん。そのですねぇ朝からいちゃつくのは止めてもらえませんかね?」


ロンが頬杖を付いてふてぶてしく言った。

確かに事情を知らない人達から見れば二人はいちゃつくバカップルだ。

だが、今ハリーはジュリアのぎこちなさを解すためにわざとこんな事をして空気を和らげたのだ。


ロンの言葉で台無しになってしまったのだが。

事情を全て知っているハーマイオニーはハリーの気遣いの優しさに関心し、ロンの空気の読めなさに苛立ち、ロンの足を踏みつけた。


「痛ッ、何するんだいハーマイオニー!」

「あなたは少しデリカシーが無さすぎるのよ」

「へぇ、デリカシーのある人はいきなり人の足を踏みつけるんだね、キミはデリカシーよりもレディらしさを身に付けたらどうだい?」


ハーマイオニーとロンの間にバチバチと火花が燃え散る。


「ロ、ロン、はい、ベーコンエッグ、ポテト、チェリーパイ、クランベリージュース!ハリーはミルク?カボチャジュース?」


不穏な空気を代えようと、ジュリアは慌ててロンの好きなモノをよそい、ロンの目の前に置き、ハリーに飲み物を尋ねた。



「見たかいハーマイオニー、弟であり片割れである僕が言うのもなんだけどジュリアこそレディさ。見習ったらどうだい?」

フフンと自慢気に言うロンにハーマイオニーはまたイライラした。


「じゃあカボチャジュースお願いしてもいいかな?」

ハリーはジュリアの行為を当たり前だと言う態度はせず、少し申し訳なさそうにありがとうとコップを受け取った。


「あら、ロン見た?ハリーはジュリアにお礼を言ったし、されて当たり前みたいな態度はしなかったわ。あなたこそハリーを見習ったらどうかしら?」


ロンとハーマイオニーの言い争いに、ジュリアとハリーは目を合わせてクスリと笑った。


ジュリアはいつもと変わらない日常に安心したが、心がズキリと痛んだ。


ハリーに気を遣わせてしまったわ…。


それに、ハリーの目も、充血してたもの。


「ジュリア」

「、なぁに?ハリー」


いきなり名前を呼ばれビクッとしつつもハリーを見た。


「ありがとう」


この言葉にどんな意味が含まれているのかジュリアはよくわからなかった、が


微かに揺れたエメラルドには悲しみ以外の何かも混ざっている気がした。


キミの笑顔があればいい
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