思わず、触れたくなった


「ちょっ…マルチダ!何するの!?」

「あんたマルフォイにアタックするならまずこのダサいひっつめ髪おろしなさいよ!」


セットしていた髪をほどかれブラシをかけられるクロエは不服そうにマルチダを見た。


「だって癖っ毛なのよ、私」

「任せなさいよ、このスタイリングスプレーすっごくサラサラになるんだから」



鏡を見るとくるくるしてた髪は落ちつきサラサラとクロエの背中まで伸びている。


「わぁ!凄い綺麗!」

「いい?男はロングヘアーに弱いのよ!あんたいつもひっつめ髪なんだからガラッと印象も変わるでしょ」

「ありがとう!マルチダ!」


ギューっと抱きつくクロエを引き離しさっさとマルフォイのとこに行きなとマルチダは促した。



*



「(結果昨日はいろいろ考えてあまり眠れなかったじゃないか。これもティユールのせいだ)」
ブツブツの心の中で悪態をつきながら歩いているとドンっと衝撃がマルフォイに走った。


「…キャッ!」

「おっと…!」

ぶつかってきた女子生徒が転ばないように咄嗟に抱き留めて支える。


「前を見て歩かないと危ないじゃない…か!?」

「ごめんなさい、マルフォイ」


マルフォイは女子生徒の顔を見て固まってしまった。先程まで脳内を占めていたクロエ・ティユールだったからだ。


しかもいつもピシッと結んでいる髪を今日はおろしている。
とても新鮮だ。


「ぅ、…次からは気をつけるんだぞ」

「えぇ、ありがとう」


クロエはニッコリ笑うとサラサラの髪を靡かせて歩いていってしまった。


ふわりと甘い香りがマルフォイの鼻腔をくすぐる。


「(彼女の、香りか?)」

ドクンッと心臓が鳴ったのにマルフォイはまだ気付いていない。


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