キスされるのかと思った



バタービールを飲みながらクロエは落ち着いてマルチダに教わった会話テクニックを思い出していた。
もともとクロエは男性とのしかも好きな男の子との会話なんてどうしていいのかわからなかったがそんな時こそマルチダが教えてくれたテクニック。



「それでシーカーは速さと正確さが大切なんだ」

「速さと正確さ?」

「あぁ、速いだけじゃスニッチに追い付いても見失う事もあるしな」

「見失うこともあるんだぁ」

「スニッチは速いからな、僕は見失う事なんてしたことないがね」

「ふふ、ドラコは凄いね」

ニコニコと微笑みながら楽しそうに話を聞くクロエにマルフォイの気分は急上昇だった。デート中にクディッチの話はダメだとわかっているがつい少しでもクディッチの話になると止まらない。他の女の子も聞くには聞くが内心つまらないのか媚びているような聞き方でマルフォイはそれが嫌だった。でもクロエは本当に楽しそうに興味を持って聞いてくれている、それがとても嬉しかったのだ。


【デートルールその4
会話に自身がない場合は相手の言葉の要点をおうむ返しする。笑顔を絶やさない】



「あ、ドラコ…バタービールの泡がついてる」

「!、あ…どこだ?」

慌てて拭うが取れてないらしくマルフォイは羞恥で赤くなり焦っていろんなとこを拭う。


「ふふ、目閉じて」

クロエに言われた通り目を閉じるとふわりと甘い香りがマルフォイの鼻孔を擽る。そして柔らかいハンカチで泡を拭かれたようだ。


「とれたよ」

ニッコリ微笑むクロエにまたもや胸がキュンッとする。

「すまない…そのハンカチ、洗って返す」

「いいよいいよ、高いハンカチじゃないし、それにハンカチは汚れるものでしょ?」

優しく微笑むクロエにマルフォイはこの短時間でさらに虜になっていた。カッコいい自分じゃないカッコ悪い自分を受け入れてくれるクロエ。

煩い心臓を抑えるのに必死なのがクロエにバレないようにドラコはバタービールを追加注文した。


【デートルールその5
スカートの裾や手首、耳の裏、ハンカチなどにふわりと香水をかける。香水は下から上へ香るので下につけるのがオススメ】


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