lovers | ナノ
ねえ、メフィスト。
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明け方、あたしは毛布の隙間から入る冷気で目を覚ました。
裸の体を起こすと、ところどころ赤くなってることに気付く。
あのばか、吸うのはやめろって言ってるのに!
はあ、と深くため息をついてまた横になる。
そのとき
「おや、お目覚めですか。
よくもまあそんなに眠れますね。それだけ私の愛情表現が激しかったということでしょうか。」
あのばか、こと、メフィストがにやにや笑いながら寝室に入ってきた。
むかつく。
あたしは無言のままクッションを投げてみたが、軽く受け取られて押し戻された。
メフィストのにやにや笑いは続く。
「昨日はあんなに素直だったのにもうこれですか。
いやはやそのギャップをうまく使い分けて…流石は林檎さん、小悪魔ですね」
「うるさい!
それよりこれどうしてくれんのよ!隠せないんですけど!
つま先から鎖骨まで吸うなんて頭おかしいんじゃないのばか!」
「正確には足の裏からうなじまで、ですけどね。」
メフィストはより深く笑う。
このド変態!!!
「いいじゃないですか。今日は任務なんていかないで私と一日中戯れていれば。
あ、いっそもう任務申請しましょうか。
フェレス卿直々のセッ」
「黙れ!!!!!!!」
あたしは耐えきれずに右手を突き出した。
こんなの、メフィストには簡単に止められるってわかってるんだけど。
案の定あたしの右手はメフィストの左手へ。
「人の話をきけないくらい遊んでほしいんですか?
仕方のない人だ…」
そうしてメフィストはあたしの唇に噛みつく。
口の中に血の味が広がる。ちょっと痛い。
血を軽く吸ってなめとったあと、メフィストは口を離して不思議そうな表情を浮かべた。
「私今まで何回か人間の血を口にする機会があったのですが、林檎さんほど甘く感じたのは初めてです。
本当に人間ですか?」
なんだろうなー。
ちょうばかなんだよね。このひと。
でも、こんなばかみたいな質問もいとしく思えるからたぶんあたしもばかなんだと思う。
ちょっととぼけた顔とか、いつも人をばかにしたような目つきとか、たまに、あたしを殺そうとしてみるとことか。
「調べてみる?」
だから、どうしても。
メフィストが、何、でも。
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「結局、10時なんですけど…」
日差しがさんさんと降り注ぎ、まぶしい at 10:30。
結局またメフィストに遊ばれることになってしまって、って、まあ自分が誘ったみたいなもんだけど。
「林檎さん落ち着きましたか?」
「え?」
あたしに腕枕をするメフィストがにやにやと問う。
「なんだかとっても悲壮感にあふれた目をしていましたから」
どき
言い当てられるのが怖くて、「なんのことー」とごまかす。
そしてメフィストはあたしを抱き寄せた。
肌と肌で、ぬくもりが直接伝わる。
あったかい。
こうしてると、何もかもどうでもよくなる。
メフィストのことも、あたしのことも、世界のことも。
「全く…
貴女の安心毛布になるのも楽じゃありませんね。
いくら私が若者にも負けないアレだからといっても、貴女の絶倫ぶりにはため息が出ますよ。」
そんなつかの間のほっこりを、メフィストはため息交じりにぶち壊す。
「〜〜〜〜!!!!!」
むかついたから、胸板の突起を思い切り引っ張ってやった。
「おっ、今度はそういうプレイをご所望ですか?
やれやれ…仕方ないですねえ。それでは、制服で、というのはいかがでしょうか。」
「うるさい!!!!!」
ねえ、ねえメフィスト。
そうやっていつまでもあたしの目と耳をふさいでいて。
あなたの生きる時間を、あたしの死ぬ時を、世界の終末を、
ずっとずっと忘れさせて。
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メフィスト大好きなのに、萌え方試行錯誤中。
ふさぐ
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