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感染る!


‐‐‐‐

「きんぞぉ、そんなにかっこんだら林檎に米飛ぶやろが!!」


「んぐっ?!ほんまに?俺今かっこんどった?スマン林檎!!」


「ゆうてる端から飛ばすな!」


うう。
あたしは今、理由あってお世話になってる志摩家の次男と四男と食事を共にしてる。

別に金造がお米飛ばす勢いでかっこんでるのはいい。

柔造さんが怒って金造をどつく…殴るのもいい。

ただ1つ。問題が。


「あ、うん。いいよ。大丈夫。詰まらせないでね。」


「林檎はやっぱりええ女やなあ!そんなこまいこと気にせえへん!男気にあふれたええ女や!!」


「男気ちゃう!!!!」


また柔造さんの鉄拳制裁。

この兄弟漫才はもうすっかり見慣れて、今更どうということはないんだけど。




「柔造さん、もうえ…いいから。冷めちゃうから、食べましょう?」


「せやな。林檎の手料理冷めてもうたら金造殺しても殺しきらんわ。」




あのね




「ちょっ、柔兄まさか俺のこと殺す気やあらへんか?!」


「ははは。物のたとえやないか。」


「なんもたとえてへんやんけ!!」




あの




「なんや今日林檎あんま喋らへんなあ。喉でも痛いんか?」


柔造さんはあたしの顔を覗き込む。


「いやえっと、そうゆうんちゃ…じゃないですけど。」


「せやったらどした?調子悪いんか?」


金造もあたしの顔を覗き込む。
あたしは真正面から二人の目力を受け止めることができずに俯いてしまった。


そゆんじゃ、ないんだけど…


俯いたあたしに柔造さんは




「…おい金造ぉ。お前林檎にいらんことし腐ったんちゃうやろな…」

と、金造にとっても怖い顔をする。

「なんかって…なんもしてへん!!!ホンマ!!!ホンマやって!!!錫杖下してつかぁさい!!柔兄!!!実の弟やで!!!信じられへんのか!?」



「やかましいわ!!実の弟やさけ信じられへんのや!!!!そこへ直りぃ!!!」





あ、これはあかんわ。
志摩家第10000万回記念兄弟喧嘩がはじまってしまう。







「柔造さん!金造!ちょぉ落ち着き!!!そゆんちゃうから!!!ほんまに!!!」








あたしが怒鳴ると、掴みあっていた二人はポカーンとした表情でこちらをみた。



わあああ、やってしまった。



顔が真っ赤になる。だから喋りたくなかったのに…





‐‐‐‐

「つまり、

京都暮らしが長なって、俺らの京都弁が感染ってしもーて、はずかしなった…というわけやな?」


こっくりうなずく。


「プッ…ハハハハハ!!!アホちゃう?!そんで喋れへんかったんや!!!林檎ほんまのアホやな!!!」


金造が笑い転げながらあたしのことをばかにするのにカチンときて、



「なんやねん!アホにアホゆわれたないわ!!!このドアホ!!!」



つい。
ほら、つい!!!!
ああもう!!!




「くっくっく…なんや板についてきとるやないか」




「ぐっ…柔造さんまで!だから喋りたくなかったのに!」




一人背を向けてむくれるあたし。
ほんとーにはずかしいんですけど!!




「関西人って、関西人じゃない人のエセ関西弁ばかにするじゃないですかあ…
だからほんとやだったのに!
柔造さんと金造とばっかりいっしょにいるから感染ったの!!」



二人が、にやっと笑った気がした。


そして肩にかかる二人分の重さ。




「なんや、うれしいこと言ってくれるやんか。」




右から柔造さんが




「なかなか大胆な告白やったなあ?」




左から金造が。




「俺らはええんやで。林檎が関西弁で喋ったほうが。」





「俺らとずーっとずーーーっといた証やもんな。」





二人の言葉に目が回る。

あたしは赤くなりすぎてもうタコみたいや。
くらくらして、ふらふらする。




そして二人は同時にあたしの耳に息を吹き込みながら






「なあ、林檎?」






ゆっくりと毒が回って回って

標準 が侵される。


幸せな、甘い毒。




‐‐‐‐

関西弁ってうつりますよね。
うつるとうれしそーな顔をして

「いまなんてゆーた?」

ってききなおすのがとても好きです。









うつる
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