願い、想い | ナノ


まるでその人を象徴したような真っ赤な髪、

誰にでも与えられる
無償の優しさ、

そして、

誰よりも明るく
太陽みたいに笑う先輩が
俺は大好きだったんだ──


い、想い


「赤也ぁー」

「なんすかぁ?」


毎週この時間は唯一先輩のクラスが数学、俺のクラスが英語になる日。


だからこんな日は互いのサボり場になってる屋上で出会うことがよくある。


俺はこの時間がすごく好きで、二人並んで座って、


なのに


「好きな奴、できた」

「っ…!」


突然告げられた言葉。
俺が一番恐れてた言葉。


「…へぇ、…どんな子…スか?」

「あー、ふわっとしてて」


嫌だ、


「ちっちゃくて、」


嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、


「めちゃくちゃかわいーの」


やめて、先輩、
そんな顔して話さないで、


「はは、大好きッスね」

「…当たり前。好きな奴なんて出来るわけねーって思ってた」


ねぇ、やめてよ
俺から離れて行かないで


「でも…出来たん、すね」

「俺さ、赤也がいれば…それでいいって思ってた」

「えー、なんスかそれ?」


再び告げられる突然の言葉。先輩の様子はさっきと変わらず同じ調子で話し続ける。


「俺は多分、きっとこいつとバカやって、テニスして、たまに家に遊びに行って、」

「……」

「そうやって、大人になっていくんだろうなって」

「……」

「いつか、俺にもお前にも家庭が出来て、毎日が幸せで、それで」


どうして先輩は、
こんなに優しいんだろう

どうしてこんなに、
柔らかい表情で話すんだろう


「そうなっても俺達は、きっと」

「またふざけあうんでしょうね」

「…当たり前だろぃ」


"先に言うなよ、ばーか"


なんて先輩が笑うから、
つられて俺も笑って、


あぁそうか、俺は──



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