「先輩」
「あ?なん、っ─!?」
テレビに意識が集中してたおかげであっさり俺に押し倒された先輩が驚いた顔で俺を見る。
「"なに"じゃないでしょ?」
「なにだろぃ!何だよいきなり…びっくりすんだろ、あと痛ェ」
「先輩がテレビばっか見て気付かないのが悪い」
「俺のせいかよ」
むっとした表情で睨んでくるけどそんなの全然効果ない。
…ていうか
「ねぇ、」
「んだよ早く退─」
「なんで顔赤いの?」
「っ!?」
先輩の顔がさっきから少し赤い。正確には、"さっきから"というより"俺が押し倒して"から。
俺自身、先輩が大好きな"ロキ"って奴に嫉妬して怒りに任せて押し倒したわけで。
よくよく考えてみればこの状況はいろいろマズイ。
なにがどうマズイって俺の理性がいろいろ、ね!
「……す、すいません先輩!今退きまっ─」
「お前が…」
「へ?」
「お、お前が急に…押し倒したりするからだろ…っバカ也!」
「ええ!?」
つ、つまりあれだ。
先輩の顔が赤いのは
俺が押し倒しちゃったからで、そう、俺のこの行為で。
"俺"…だから
「…退くんだろぃ、早く退けよ」
「先輩顔見せて。腕退けてよ」
「…やだ」
「ねぇこっち見て?赤くていいからさ、」
「…っるせー」
可愛くないこと言いながら俺を見る先輩は、すっげー可愛い。
この人が俺のモノだと思うともうどうしようもない気持ちになる。
「かーわいー」
「死ねっ!」
「ほんとに死んでいいの?」
「…うるさい」
「ねぇ、先輩がほんっとに好きな人は誰?あのアニメのキャラ?それとも…」
「は…バッカじゃねーの…」
そう言って俺の首に腕を回して抱きついてきた。
「せ、先輩?」
「赤也に決まってんじゃん」
「っ!…」
「いちいちアニメなんかと比べてんな。俺の一番は、赤也しかいねーの!」
抱きつかれてて顔は見えなかったけどきっと真っ赤なんだろう。
俺としてはそんな先輩が見たいんだけど。
でもまぁ先輩の告白も聞けたし今日は許してあげます。
「俺の一番も先輩ッスよ」
それでも好きなんだ!
(じゃあもうあのアニメは見る必要ないッスね!)
(は?見るに決まってんだろぃ!ロキ大好きっ!)
(…泣いてもいいッスか。)