「あ、あの、えと…〜ま、また部活で!!」
「え、ちょっ赤也っ!!」
うそだろ…逃げられた…なんで俺ちょっと避けられてんの…?
これは流石に痛い。胸が。
だって朝はちゃんと会話できたのに。なのに朝練も昼も微妙に距離置かれて。なんだよ急に、なんで急にこんなことすんだよ赤也。
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──
「…もうやだ」
「丸井ー大丈夫かー?」
「ほんと、意味わかんない…」
ついに部活の時間。
あれから二回くらい赤也を見かけたけど、まともに話してはくれなかった。部室で会っても、「あ…こんちはッス」って、それだけ。
でも、今視線の先にいるのは、柳と楽しそうに話す赤也。
柳は良くて、俺はダメ?
ううん、他の人は良くて、俺はダメなんだ。きっと。
「…俺だって、今日あんなに喋ってないのに」
「本音駄々漏れじゃの。」
「うっせ黙れ」
「おー怖」
仁王がヘラヘラしてるけどそんなの気にしてられない。頭の中は赤也のことでいっぱいだ。
知らなかった。
赤也とちょっと離れただけでこんなにもやもやするなんて。
赤也と喋れないだけでこんなに悲しくなるなんて。
「っ…赤也!!」
「へ、まるっ…ん─!?」
隣に柳いるけど、関係ない。
離れたところで仁王が見てるけど、関係ない。
みんな部室に来始めてるけど、全部関係ない。
赤也は、俺のなんだ。
「……っバカ!!」
それだけ言って、部室を飛び出した。逃げたんじゃない。逃げたんじゃ……逃げた。
***
ワケが、分からない。
一体いま何が起こったんだ。
「い、いま…え…丸井せん、ぱい…?」
「ちゃんと丸井だったぞ」
「なんじゃただの痴話喧嘩かの」
「たたたたたるんどる!!」
そんなこと一斉に言われても聞き取れない。大体俺だって混乱してるんだ。こんなに人がいるのにキスされちゃったし、いや俺としては全然構わないけどね、むしろ嬉しいけどね!
でも自分からしといてバカってなに?別にそれに怒ってるわけじゃないけど、え、俺が悪いの?
「ちょっとー、何?今ブン太半泣きで走ってったんだけどー」
ガチャ、とドアを開けて入ってきたのは幸村部長。というかなんだって?丸井先輩が半泣きで走って行った?え、うそ、更に俺、泣かしちゃったの?
「原因赤也でしょ?何とかしてきてよ」
「げ、原因って言われても!俺も何がなんだかさっぱりで─」
「じゃあ赤也は、このままブン太を放っとくのかい?」
「!〜っちょっと行ってきます!」
「あ、30分で戻って来ないと外周増やすからね」とか聞こえたけど聞こえなかったことにした。この鬼畜部長め!
とりあえず走った。
先輩が行きそうなとこ、こんな時先輩ならどこに行くのか、思い当たる場所全部に行ったけど、結局見つかんなかった。
どこ行ったんだよもう…
俺先輩が泣くようなこと何かしたっけ…?