「…ほんとに、嫌?」
「え、あ…」
「嫌だったら…やめる」
ゆっくり手が離れていく。
違う、嫌じゃない。
赤也なら、いいのに。
「っ…いやじゃない」
「でも、」
「違くてっ…き、きもち…い…からっ…」
「…先輩顔真っ赤」
「はっはずいだろこんなの!言わせんなバカ!」
「はは、すいませんて」
さっきまで真面目な顔だったのに、へらっとした顔になった。しかしそんな顔でもやってることが容赦なさすぎる。
「っちょ、あか…っ!」
「気持ちよすぎたんだ?」
「〜ば、か…ッぁ……」
握ったり、撫で上げたり、もう何をされてるのかよくわからない。頭が真っ白で何も考えられない。
赤也いつブレザー脱いだんだろ、とか、俺のネクタイどこいったんだろ、とか、どんな顔して赤也と帰ればいいんだ、とか、唯一頭に浮かぶことはそんな下らないことばっか。
「なーに考えてんの」
「っひゃ、〜…っん、なに、も…」
「ふーん…じゃあ俺のこと見て」
「え、」
と思った時には遅かった。
「!ッぁ、や、ッ待っ…あ─…っ!」
「は…かーわい…」
…最悪。
あんなの不意打ちだ。
もう、恥ずかしくて死にそう。
「っ…、……〜〜」
「せーんぱい、大丈夫?」
「〜だい、じょぶ…だけど…っ…」
だけど、赤也の顔が見れない。いいって言ったのは俺だけど、やっぱり限界だ。どうしよう、これからどうなんの、俺。
と、そこまで考えてシャットアウト。手を掴まれて引き起こされる。あれ、いつの間にか赤也がブレザー着てる。あれ、俺もネクタイしてる。…あれ?
「ちょっと落ち着いた?」
「へ…あ、あぁ…」
「そっか。じゃ、帰りましょっか!」
「…へ?」
「あーっとその前にちょっとトイレ行ってくるんで、帰る準備しといて─」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「はい?」
淡々と進んでいく話に何がなんだかさっぱり理解できない。だって、赤也が言い出したのに。やっぱ俺なんかが相手じゃ無理ってこと?
「っい、嫌だったならそう言えよ!気持ち悪いって!無理だって!」
「え、は?ま、丸井先輩?何言って…」
「俺が相手じゃだめだから、途中でやめっ…ふ、ん!」
言い終わる前に、ガッと手で口を押さえつけられた。あ、れ…なにその顔…。
「それ以上言ったら怒りますよ」
言葉を返そうにも、赤也が手を離してくれないから何も言えない。なに?赤也が怒るようなこと、言った?
「最初に言ったこと忘れた?」
最初、って…
"痛くしない。先輩が気持ちいいことしかしないから"
「!」
「ね、だから終わり。ってことでさ、察してもらえます?」
──ほんとは最後まで、したいんだからね
そう、耳元で囁いて部室を出ていった。あー…そういうことか。なんだよ、俺ばっかこんなことされて。
「っバカ…お前のせいで心臓うるせぇよ」
使ってみた
(ちょっと前に進む口実に)