4 | ナノ


「…ほんとに、嫌?」

「え、あ…」

「嫌だったら…やめる」


ゆっくり手が離れていく。
違う、嫌じゃない。
赤也なら、いいのに。


「っ…いやじゃない」

「でも、」

「違くてっ…き、きもち…い…からっ…」

「…先輩顔真っ赤」

「はっはずいだろこんなの!言わせんなバカ!」

「はは、すいませんて」


さっきまで真面目な顔だったのに、へらっとした顔になった。しかしそんな顔でもやってることが容赦なさすぎる。


「っちょ、あか…っ!」

「気持ちよすぎたんだ?」

「〜ば、か…ッぁ……」


握ったり、撫で上げたり、もう何をされてるのかよくわからない。頭が真っ白で何も考えられない。


赤也いつブレザー脱いだんだろ、とか、俺のネクタイどこいったんだろ、とか、どんな顔して赤也と帰ればいいんだ、とか、唯一頭に浮かぶことはそんな下らないことばっか。


「なーに考えてんの」

「っひゃ、〜…っん、なに、も…」

「ふーん…じゃあ俺のこと見て」

「え、」


と思った時には遅かった。


「!ッぁ、や、ッ待っ…あ─…っ!」

「は…かーわい…」


…最悪。
あんなの不意打ちだ。
もう、恥ずかしくて死にそう。


「っ…、……〜〜」

「せーんぱい、大丈夫?」

「〜だい、じょぶ…だけど…っ…」


だけど、赤也の顔が見れない。いいって言ったのは俺だけど、やっぱり限界だ。どうしよう、これからどうなんの、俺。


と、そこまで考えてシャットアウト。手を掴まれて引き起こされる。あれ、いつの間にか赤也がブレザー着てる。あれ、俺もネクタイしてる。…あれ?


「ちょっと落ち着いた?」

「へ…あ、あぁ…」

「そっか。じゃ、帰りましょっか!」

「…へ?」

「あーっとその前にちょっとトイレ行ってくるんで、帰る準備しといて─」

「ちょ、ちょっと待てよ!」

「はい?」


淡々と進んでいく話に何がなんだかさっぱり理解できない。だって、赤也が言い出したのに。やっぱ俺なんかが相手じゃ無理ってこと?


「っい、嫌だったならそう言えよ!気持ち悪いって!無理だって!」

「え、は?ま、丸井先輩?何言って…」

「俺が相手じゃだめだから、途中でやめっ…ふ、ん!」


言い終わる前に、ガッと手で口を押さえつけられた。あ、れ…なにその顔…。


「それ以上言ったら怒りますよ」


言葉を返そうにも、赤也が手を離してくれないから何も言えない。なに?赤也が怒るようなこと、言った?


「最初に言ったこと忘れた?」


最初、って…
"痛くしない。先輩が気持ちいいことしかしないから"


「!」

「ね、だから終わり。ってことでさ、察してもらえます?」


──ほんとは最後まで、したいんだからね


そう、耳元で囁いて部室を出ていった。あー…そういうことか。なんだよ、俺ばっかこんなことされて。


「っバカ…お前のせいで心臓うるせぇよ」


使ってみた
(ちょっと前に進む口実に)


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