「い、てぇ……なにやって…」
「先輩」
「んだよ……、あ」
「…これ、コンd─」
「わああああ言うなバカ死ね変態!!」
「ちょ、痛っ、まだ何も言ってないじゃないスか!」
顔が熱い。真っ赤になってるって自分でも分かるくらい熱い。恥ずかしくて普通じゃいられなくて、暴言と共に手も足も出る。
俺と赤也は付き合っている。だからそんな関係の相手に、あれを見られたくなかった。意識してしまうから。しかも学年が違う赤也には、俺がこんなものを持ってる理由なんて分かるはずがない。
(こんなん、誘ってるみてーじゃん…っ!)
「っわかった、わかったから…!ちょっとせんぱ…痛いって…!」
「!…ご、めん」
「はー…とりあえず手か足が出る癖直しましょーよ…」
「〜っお前が、そうさせるようなことするから…だろぃ」
「まぁ、そーなんスけど」
とりあえず、と言って俺の手から床に落ちた例の物を赤也が拾い上げる。押し倒されたままの俺はどうすることもできず、横を向いて赤也を見ないようにした。
「…これって、あれですよね」
「…そーだよ」
「あの、こう…エロいことする時に使う…」
「だああそーゆー言い方やめろ!!余計恥ずかしい!!」
「ええ!?先輩が言うなって言うから別の表現にしたんじゃないッスか!!」
「しなくていい!」
「もー理不尽なんだから…」
目の前でふてくされながらブツブツ言う赤也に、腕を引かれて起こされる。そして「あ、」と声を発した。
「なんでこれ持ってるんスか?もしかして俺と」
「ちっ違う!違うから!!そ、そーゆー授業があったんだよ、今日!」
「あぁ…(そんな全力で否定しなくても…)なるほど。それで配られた、と。で?」
「え?」
「何が嫌なんスか?」
「っ……〜持ってたくないっつーか、…持って帰りたくないっつーか…」
「ふーん…」
さっきから落ち着かない俺とは反対に、急に静かになった赤也は何かを考えてる様子。
(頼むからまともなことを言いますように!アホなことを言い出しませんように!)
そんなことを願っていると、まったく予想外な言葉が飛んできた。
「じゃあ、それ俺にください」
「へ?」
俺に…ください…?
今こいつ、くれって言った?
「は、え?なんで?」
「先輩持ってんの嫌なんでしょ?」
「…まぁ」
「んじゃ、もーらいっ!」
まるで人の弁当のおかずを奪った時のような言い方をして、無邪気に笑う。…いやいやいや、嬉しそうにする意味がわかんねーんだけど。食べ物じゃねぇぞ、それ。
なんだかよく分からない展開になってしまったが、まぁいい。俺の悩みの種は今、この瞬間、無くなった!
「よーし、帰るか」
気持ちも軽くなったところで、そう言って立ち上がろうとした時。
「何言ってんスか?」
グイッ
「へ、わっ!?」
座ったままの赤也に腕を引かれ、その勢いのままに再びベンチに背中をつけることになった。背中の痛みを感じながら目を開けると、俺の上でニコニコしている赤也。