2 | ナノ


「い、てぇ……なにやって…」

「先輩」

「んだよ……、あ」

「…これ、コンd─」

「わああああ言うなバカ死ね変態!!」

「ちょ、痛っ、まだ何も言ってないじゃないスか!」


顔が熱い。真っ赤になってるって自分でも分かるくらい熱い。恥ずかしくて普通じゃいられなくて、暴言と共に手も足も出る。


俺と赤也は付き合っている。だからそんな関係の相手に、あれを見られたくなかった。意識してしまうから。しかも学年が違う赤也には、俺がこんなものを持ってる理由なんて分かるはずがない。


(こんなん、誘ってるみてーじゃん…っ!)


「っわかった、わかったから…!ちょっとせんぱ…痛いって…!」

「!…ご、めん」

「はー…とりあえず手か足が出る癖直しましょーよ…」

「〜っお前が、そうさせるようなことするから…だろぃ」

「まぁ、そーなんスけど」


とりあえず、と言って俺の手から床に落ちた例の物を赤也が拾い上げる。押し倒されたままの俺はどうすることもできず、横を向いて赤也を見ないようにした。


「…これって、あれですよね」

「…そーだよ」

「あの、こう…エロいことする時に使う…」

「だああそーゆー言い方やめろ!!余計恥ずかしい!!」

「ええ!?先輩が言うなって言うから別の表現にしたんじゃないッスか!!」

「しなくていい!」

「もー理不尽なんだから…」


目の前でふてくされながらブツブツ言う赤也に、腕を引かれて起こされる。そして「あ、」と声を発した。


「なんでこれ持ってるんスか?もしかして俺と」

「ちっ違う!違うから!!そ、そーゆー授業があったんだよ、今日!」

「あぁ…(そんな全力で否定しなくても…)なるほど。それで配られた、と。で?」

「え?」

「何が嫌なんスか?」

「っ……〜持ってたくないっつーか、…持って帰りたくないっつーか…」

「ふーん…」


さっきから落ち着かない俺とは反対に、急に静かになった赤也は何かを考えてる様子。


(頼むからまともなことを言いますように!アホなことを言い出しませんように!)


そんなことを願っていると、まったく予想外な言葉が飛んできた。


「じゃあ、それ俺にください」

「へ?」


俺に…ください…?
今こいつ、くれって言った?


「は、え?なんで?」

「先輩持ってんの嫌なんでしょ?」

「…まぁ」

「んじゃ、もーらいっ!」


まるで人の弁当のおかずを奪った時のような言い方をして、無邪気に笑う。…いやいやいや、嬉しそうにする意味がわかんねーんだけど。食べ物じゃねぇぞ、それ。


なんだかよく分からない展開になってしまったが、まぁいい。俺の悩みの種は今、この瞬間、無くなった!


「よーし、帰るか」


気持ちも軽くなったところで、そう言って立ち上がろうとした時。


「何言ってんスか?」


グイッ


「へ、わっ!?」


座ったままの赤也に腕を引かれ、その勢いのままに再びベンチに背中をつけることになった。背中の痛みを感じながら目を開けると、俺の上でニコニコしている赤也。


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