「まだ俺が誰にもしたことない話、してやろっか」
そんなことを唐突に言ったのは、大好きな大好きな丸井先輩。
面倒見がよくて、さっぱりした性格で、俺みたいな手のつけられない問題児とだってあっさり打ち解けちゃう。
立海に入りたての頃のまさに問題児な俺を、見捨てないでなんだかんだ励ましてくれたのも丸井先輩。
そうやって関わっていくうちに、どんどん俺は先輩に惹かれていった。
さっぱりした性格は、蓋を開けてみればただの俺様で。
面倒見がいいのは弟が二人いるからで。
あんなに男らしいのに、怖いのが苦手で。強がって真っ暗な校舎に入ったはいいけど、結局怖くて半泣き状態で俺にしがみついてきたときはどうしようかと思った。
甘いものが大好きで、ケーキバイキングによく行くってのはあんまり驚かなかった。見た目からして、好きそうだなって。食べる量は、流石に男だと思ったけど。
そうやって先輩を知るたび、俺の想いは募っていった。男だからとか最初はすっげー悩んだけど、好きなもんは好きなんだから仕方ないってもう諦めた。
さて。
そんなわけで、告白したのはもちろん俺。先輩がOKくれたときはちょっと信じられなかった。だって先輩って絶対女が好きだし、彼女だっていたと思うし、俺より経験あると思うし、だからほんとに俺でいいの?って思ったわけよ。
で、冒頭に戻るんだけど。
「…誰にもしたことない、話?」
「そう」
「それ聞いちゃっていいんスか?」
「聞きたくない?」
にっこりと笑った先輩。うん、今日もかわいい。初めて会ったときから思ってた。先輩の笑った顔はすっげーかわいい。
「おーい」
「あ、はい」
「今なに考えてたんだよ」
「え、今?丸井先輩今日もかわいーって」
「……そりゃどーも」
あれ、拗ねたかな。
機嫌損ねると話してくれなくなるかもしんないし、からかうのはこのくらいにしとかないと。
「はは、すいません。先輩の話聞きたいッス!」
「もーいいよ」
「そんなこと言わずに、ね!」
「…じゃあさ、お前考えたことある?」
「何をッスか?」
「俺の経歴」
…先輩の、経歴?