「…おい」
「っはい…」
「なに顔隠してんだよ」
「いや、ちょっと見ないで先輩…今真っ赤だから…」
特に逃げ場もなく、仕方ないから手で顔を覆って下を向いていた。
だって、なに?
さっきなにが起こった?
先輩がキスしてくれて、俺のことは大好きとか言ってくれて、こんな幸せなことってある?
「お前さぁズルくねぇ?俺にはいつも顔見せろって言ってくるくせに…」
「す、すいません、こんな恥ずかしいと思ってなかったんで」
「…あかやぁ」
「………なんスか?」
「顔、上げて?」
「っ…先輩の方がズルいっしょ」
覚悟を決めて、顔を上げる。目に入ってきた先輩の顔は、やっぱりかわいくて、「ばーか、ズルくねーよ」って言った時のちょっと拗ねた顔も、俺がドキドキするには十分だった。
「赤也さ、昼休みの気にしてんだろぃ」
「え……そ、そんなこと…ないッスよ?」
「へー。じゃあいっか」
「あーー!すいません気にしてました気にしてました!!」
「ふっ…必死すぎ」
「おわっ、先輩!?」
少し笑って、先輩が思いっきり抱きついてきたから、バランスを崩した俺達はその場に倒れ込んだ。背中に少し痛みを感じながら目をあけると、嬉しそうに笑いながら先輩が耳元で囁いた。
「──…」
「っ…なに、それ…」
「だから、赤也は大好き」
「…先輩、今日家帰らせないからね?」
("愛してる"は、軽い感じがするから赤也には使わねーの!)
(だったら俺も、先輩のことは世界一大好き!)