2 | ナノ


「っ…どーいたしまして」


出来るだけ笑顔で、普通に、普通に。…とは言っても、半ば逃げるようにしてその場から離れた。向かった先は、もちろん。


「に、ににに仁王先輩!!」

「なん…戻ってきたんか…」


思いっきり面倒ですって顔されたけど、この際気にしてなんかいられない。


「だっだって!見ました!?すっっっげー可愛くなかった!?」

「あーはいはいかわえーのぅ。でも赤也、」

「なんすか?」

「愛してるって言ってもらえんかったの」

「……。」


しまったぁぁぁぁぁ!!


そうじゃんそうだよそうだった!!超忘れてた!俺のバカ!バカ也!言いかけてたのにやめるとか、何あれ。俺嫌われてんの?それはないか。…だとしたら、何で?


「〜っあーもうわかんねぇ!!」

「バカな癖に考えるからじゃ。部活んとき話せばよかよ」

「あ、なるほど。さんきゅッス仁王先輩!」

「(つ…疲れるぜよ…!)」


────
──


あれから時間は過ぎに過ぎ、現在部活終了後の部室なう。え、使い方おかしい?いーんだよ英語なんて、分かんねぇもん。


次々と帰っていく先輩の中で仁王先輩とだけ目があった。そして口パクで、"頑張りんしゃい"と言って去っていった。


幸村部長は今日用事があって、鍵を丸井先輩に任せて先に帰ってしまっている。
つまり、そう。


「せーんぱいっ」

「わっ、ちょ…!」


今は、先輩と俺の二人きり。


「んだよ赤也、着替えらん─」

「好き」

「……っ!!?」


少し間をおいて、一瞬で真っ赤になった先輩。毎回ふざけながら言ってるせいか、いつもより照れてる気がする。あーどうしよう。すっげぇかわいい。


着替え中の先輩に後ろから抱きついてから、もう離れられない。(元から離れる気もなかったけど!)昼休みに教室で我慢した分、これくらい許されるっしょ?


「赤也…離れ…」

「先輩の心臓、すげー早い」

「〜っわざわざ言うなバカ!バカ也!早く離れろ変態!」

「うん、やだ」


無理に決まってる。
だって、先輩のこと好きなんだもん。


俺だって、あの女子達みたいに先輩といつまでもいたい。
俺だって、先輩の愛してるが聞きたい。


俺だけが先輩の特別じゃなきゃ満足出来ないガキだから。


「……赤也、」

「ん?」

「…離さなくて、いいから……向き変えていい?」

「?いッスよ?」


照れた時なんて頼んでも顔見せてくれないのに、自分からこっちに向きを変えてきた。そして、先輩の顔まだ少し赤いなぁ、なんて思ったその瞬間─


ちゅ。


……え?
い、いま、一体何が…


「…大好き」

「っえ…、せ、せんぱ…っ」

「俺、赤也のことは…だいすき、だから」


あ…もうダメだ。顔に熱が集中してるのが自分でも分かる。なんだこれ、すげー恥ずかしい。先輩に見られてると思うと尚更恥ずかしい。


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