「っ…どーいたしまして」
出来るだけ笑顔で、普通に、普通に。…とは言っても、半ば逃げるようにしてその場から離れた。向かった先は、もちろん。
「に、ににに仁王先輩!!」
「なん…戻ってきたんか…」
思いっきり面倒ですって顔されたけど、この際気にしてなんかいられない。
「だっだって!見ました!?すっっっげー可愛くなかった!?」
「あーはいはいかわえーのぅ。でも赤也、」
「なんすか?」
「愛してるって言ってもらえんかったの」
「……。」
しまったぁぁぁぁぁ!!
そうじゃんそうだよそうだった!!超忘れてた!俺のバカ!バカ也!言いかけてたのにやめるとか、何あれ。俺嫌われてんの?それはないか。…だとしたら、何で?
「〜っあーもうわかんねぇ!!」
「バカな癖に考えるからじゃ。部活んとき話せばよかよ」
「あ、なるほど。さんきゅッス仁王先輩!」
「(つ…疲れるぜよ…!)」
────
──
あれから時間は過ぎに過ぎ、現在部活終了後の部室なう。え、使い方おかしい?いーんだよ英語なんて、分かんねぇもん。
次々と帰っていく先輩の中で仁王先輩とだけ目があった。そして口パクで、"頑張りんしゃい"と言って去っていった。
幸村部長は今日用事があって、鍵を丸井先輩に任せて先に帰ってしまっている。
つまり、そう。
「せーんぱいっ」
「わっ、ちょ…!」
今は、先輩と俺の二人きり。
「んだよ赤也、着替えらん─」
「好き」
「……っ!!?」
少し間をおいて、一瞬で真っ赤になった先輩。毎回ふざけながら言ってるせいか、いつもより照れてる気がする。あーどうしよう。すっげぇかわいい。
着替え中の先輩に後ろから抱きついてから、もう離れられない。(元から離れる気もなかったけど!)昼休みに教室で我慢した分、これくらい許されるっしょ?
「赤也…離れ…」
「先輩の心臓、すげー早い」
「〜っわざわざ言うなバカ!バカ也!早く離れろ変態!」
「うん、やだ」
無理に決まってる。
だって、先輩のこと好きなんだもん。
俺だって、あの女子達みたいに先輩といつまでもいたい。
俺だって、先輩の愛してるが聞きたい。
俺だけが先輩の特別じゃなきゃ満足出来ないガキだから。
「……赤也、」
「ん?」
「…離さなくて、いいから……向き変えていい?」
「?いッスよ?」
照れた時なんて頼んでも顔見せてくれないのに、自分からこっちに向きを変えてきた。そして、先輩の顔まだ少し赤いなぁ、なんて思ったその瞬間─
ちゅ。
……え?
い、いま、一体何が…
「…大好き」
「っえ…、せ、せんぱ…っ」
「俺、赤也のことは…だいすき、だから」
あ…もうダメだ。顔に熱が集中してるのが自分でも分かる。なんだこれ、すげー恥ずかしい。先輩に見られてると思うと尚更恥ずかしい。