「っ、ふ…んん…ちょっと、って言った…っ…」
「すいません…あとで殴ってもいーから、もう少し」
「ひゃ…っばか、やめ…っ」
指先で、舌先で、触れられた箇所から熱が広がっては甘い感覚に襲われる。もう頭がおかしくなりそうだ。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。このままじゃ、絶対流される…!早くやめさせないと…早くやめさせたい、のに。
「は…っ…あ、かやぁ…っ」
まだ、
「ん…なに?」
─やめないで、なんて
「も、っと…っ」
「!」
ああ、驚いてる。赤也が俺の言葉で揺れてる。他の誰でもない、"俺の言葉"で。
いったん動きを止め、赤也が大きく息を吸う。そして、吸い込んだ息を吐き、こちらを見る。
「そんなセリフいつ覚えたんスか…ほんとにやっちゃうよ?」
「っ〜勝手にしろ」
「ん」
返事の代わりに、キスをされる。優しくて、ふわふわして、赤也のキスは気持ちがいい。周りのことなんてぜんぶ忘れてしまう。
ぜんぶ、ぜんぶ。
─ドンドンドンッ!!
「にーちゃん!あかやっ!」
「いるんでしょっ!あそぼーよー!」
「「!?」」
ビクッと大袈裟なくらい跳ね上がる。今日は休日で、昼間で。そうだ、少し考えれば分かることだ。俺の弟達が、家にいることなんて。
あーやべ、びっくりしすぎて何も声でねぇ。どーすんだよ、これ。なんか言わないと、なんか…言わないと。
「にーちゃん!入るよ!!」
言いながらドアノブに手をかけられ、焦って声を絞り出す。
「っちょ、ちょっと待った絶対入んなよ!」
「えーなんでー?」
「言うこと聞っ、ひぁ…っ…(うわああああ!!!!くそこのバカ也いっかい死ねえええ!!!!)」
キッと睨み付ければ、拗ねたような顔をしてぎゅっと抱き締められた。
「?いまの、にーちゃんの声?」
「〜き、気にすんな…とりあえずあと10分、下で待ってろ分かったな!!」
「「…はぁい」」
大人しく階段を降りてる音が聞こえてから、未だ俺を抱き締めて離さない目の前の恋人に話しかける。
「……あか、や…」
「先輩のばーか」
「う…」
「弟くん達に可愛い声聞かすしー」
「そっそれはお前が…っ」
「……」
完全に機嫌を損ねて、何か言いたげにジーッと見てくる赤也。
「…ごめんなさい。」
「別にいいっスけどー」
「こっ今度…」
「?」
「〜っ今度、は…ちゃんと……いい、から…」
自分で言っといてなんだが、あまりにも恥ずかしすぎて。まともに赤也の顔は見れてないけど、声で表情なんて簡単に分かる。
だって俺、こいつのことならなんでも分かっちゃうくらい、赤也が好きだから。
真っ赤な顔、手で隠しながらこっち見てんだろ。
「っ…先輩って、なんでそんなかわいーこと言うかな…」
ほら、な?言った通りだろ。
照れてる姿を見てたら、好きって、大好きだって、伝えたくて仕方なくなって。邪魔な手を掴んで、たくさんの愛をこめてキスしてやった。
おあずけ
(…生殺し)
(我慢しろぃ)