2 | ナノ


「っ、ふ…んん…ちょっと、って言った…っ…」

「すいません…あとで殴ってもいーから、もう少し」

「ひゃ…っばか、やめ…っ」


指先で、舌先で、触れられた箇所から熱が広がっては甘い感覚に襲われる。もう頭がおかしくなりそうだ。


どうしよう、どうしよう、どうしよう。このままじゃ、絶対流される…!早くやめさせないと…早くやめさせたい、のに。


「は…っ…あ、かやぁ…っ」


まだ、


「ん…なに?」


─やめないで、なんて


「も、っと…っ」

「!」


ああ、驚いてる。赤也が俺の言葉で揺れてる。他の誰でもない、"俺の言葉"で。


いったん動きを止め、赤也が大きく息を吸う。そして、吸い込んだ息を吐き、こちらを見る。


「そんなセリフいつ覚えたんスか…ほんとにやっちゃうよ?」

「っ〜勝手にしろ」

「ん」


返事の代わりに、キスをされる。優しくて、ふわふわして、赤也のキスは気持ちがいい。周りのことなんてぜんぶ忘れてしまう。


ぜんぶ、ぜんぶ。


─ドンドンドンッ!!


「にーちゃん!あかやっ!」
「いるんでしょっ!あそぼーよー!」

「「!?」」


ビクッと大袈裟なくらい跳ね上がる。今日は休日で、昼間で。そうだ、少し考えれば分かることだ。俺の弟達が、家にいることなんて。


あーやべ、びっくりしすぎて何も声でねぇ。どーすんだよ、これ。なんか言わないと、なんか…言わないと。


「にーちゃん!入るよ!!」


言いながらドアノブに手をかけられ、焦って声を絞り出す。


「っちょ、ちょっと待った絶対入んなよ!」

「えーなんでー?」

「言うこと聞っ、ひぁ…っ…(うわああああ!!!!くそこのバカ也いっかい死ねえええ!!!!)」


キッと睨み付ければ、拗ねたような顔をしてぎゅっと抱き締められた。


「?いまの、にーちゃんの声?」

「〜き、気にすんな…とりあえずあと10分、下で待ってろ分かったな!!」

「「…はぁい」」


大人しく階段を降りてる音が聞こえてから、未だ俺を抱き締めて離さない目の前の恋人に話しかける。


「……あか、や…」

「先輩のばーか」

「う…」

「弟くん達に可愛い声聞かすしー」

「そっそれはお前が…っ」

「……」


完全に機嫌を損ねて、何か言いたげにジーッと見てくる赤也。


「…ごめんなさい。」

「別にいいっスけどー」

「こっ今度…」

「?」

「〜っ今度、は…ちゃんと……いい、から…」


自分で言っといてなんだが、あまりにも恥ずかしすぎて。まともに赤也の顔は見れてないけど、声で表情なんて簡単に分かる。


だって俺、こいつのことならなんでも分かっちゃうくらい、赤也が好きだから。


真っ赤な顔、手で隠しながらこっち見てんだろ。


「っ…先輩って、なんでそんなかわいーこと言うかな…」


ほら、な?言った通りだろ。
照れてる姿を見てたら、好きって、大好きだって、伝えたくて仕方なくなって。邪魔な手を掴んで、たくさんの愛をこめてキスしてやった。


あずけ
(…生殺し)
(我慢しろぃ)


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