「丸井先輩」
「な、んだよ…」
「こっち向いてよ」
「…いやだ」
「なんで?お礼言いたい」
「別に…いいしそんなん」
「だめ」
何度言ってもこっちを向いてくれない。まぁ、丸井先輩が素直じゃないのは知ってるし、照れ屋なのも知ってるからいいんだけど。(俺に質問攻めされて、直球に物事を言われるのが弱いってことも勿論。)知っててやる俺も俺だし。
でも今は、
こっちを見てほしい。
先輩の顔が見たい。
「先輩、今日バレンタインッスよね」
「…だから渡したんだろぃ」
「これだけ?なんか言うことない?」
「っ言わなくても分かって─」
「聞きたい」
聞きたい、ともう一度言うと、やっと目を合わせてくれた。これ以上ないってくらい困ってる。そんな先輩も可愛いなぁなんて、もうやめてあげようかとも思わせるくらい。でもまだ、やめてあげない。
「ね、先輩。言ってよ」
「〜っ…一回しか、…言わねーからな」
「いいよ、ちゃんと聞き取ります」
「…あか、や」
先輩が名前を呼んですぐ、俺は何が起こったか一瞬分からなくなった。目の前にあったはずの先輩の顔。今は、見えない。
(え…抱きつかれて、る?)
頭の中はもうグルグル。大好きな人がこんなに近くにいて、冷静でいられるはずがない。
「あの、せんぱ─」
「好き」
「〜〜っ!!」
「はは、顔真っ赤。」
こんなの、
こんなの、
──反則だ…
「丸井先輩ってさぁ…」
「ん?」
「突然男前になるからやだ…」
「は、バーカ。いつも格好いいだろぃ?」
なんだか悔しくて、格好よくて、でもやっぱり可愛くて、好きで、大好きで。せめてもの仕返しに、キスしてやった。もちろん口に。
「っ…!」
「あ、これは仕返しなんで。お返しは、1ヵ月待ってくださいね?」
「も、もういらないっ!!」
今年も君に
(俺の大好きをプレゼント)