俺の後輩、いや恋人というべきか、切原赤也は何事に置いても性格が悪い。よく言えば意地悪、悪く言えば──
「あ、赤也」
「なんスかー?」
「リストバンド拾って」
──単なるドS。
これも愛情表現!
部活も終わって着替えてる途中、うっかり俺はリストバンドを落としてしまった。丁度近くに赤也がいたから、まぁ半ば条件反射というか…つい拾わせてしまった。
あー数分前の俺を殴りたい。
自分で拾いに行く方が
絶対早ェだろぃ…っ!
「あーこれっすか。はい、どーぞ!」
「さんきゅ…って、おい。」
「はい?」
「何のつもりだよ。返せっつーの!」
受け取ろうとしたらなんともベタにこいつはお馴染みのことをしてくれた。たいした身長差もないくせに、微妙に俺が届かない高さまで手を上げて、リストバンドは宙に浮いたままだ。
「いいっスよー?ほら」
「だーかーらぁ…届かねぇことぐらい分かってんだろぃバカ也!」
「いやいや、飛べば届くっしょ」
コイツ…!
マジ殴ってやろうか…!
殴ったところで無駄に赤也のS心に火を点けるだけ。もう仕方ない、早いとこ返して貰うには飛ぶしかない。と考えた俺は、…飛んだ。赤也の手を目掛けて。
「っ…ばか!手動かすなっ!」
「動かしてませんよー?先輩の飛び方が足りないんじゃないッスか?」
「うっせ!俺はどこぞのムーンサルト野郎とは違ェんだよっ…!」
…全く取れる気がしない。届いたと思えば体を退いて逃げられる。
かれこれ2,3分これを繰り返し続け、赤也はというと相変わらずにこにこと、実に楽しげな顔をしている。
「ほらほらこっちッスよっ!」
「…ンの…バカ也っ!!…っえ、や、うわっ!!」
どうせ体を退くんなら、と思い、赤也に抱き付くような角度で飛び込んだら、何故か今回に限って体を退かなかった。それどころか赤也は、飛び込んできた俺を思いっきり抱きとめてしまっている。
「丸井先輩つっかまーえたっ!」
「なっ!は、離せバカっ!!」
「あれ、照れてる?先輩から抱き付いてきたくせにそれはないっしょ!」
「ち、違う!!俺はただっ…リストバンドを取るためにっ!」
「えーリストバンド?先輩ちゃんと着けてますよ?」
「は?んなわけ…」
…何故、何故リストバンドをしているんだ俺の右手首。
最早謎すぎて赤也の顔を見上げれば、"ね、してるっしょ?"とか言いながらぎゅうぎゅう抱き締めてくる。こいつ…全部わざとかよ…!
「あーっもう!はーなーせーっ!!」
「やーだ。あ、でも先輩が俺にキスしてくれたらいいっスよ?」
「はぁ!?でっ出来るわけねぇだろぃ!」
「だよねー、さっきからずーっと先輩達も見てますしねー」
「え、…っ!!!?」
目の前のことに必死すぎて周りのことまで気が回らなかった。赤也に言われて横を見ると、にやにやしながら傍観してる仁王に、赤面してる真田と比呂士、腕を組んでにこにこしてる幸村くんと、呆れた様子の柳とジャッカル。
「やーっぱ先輩気付いてなかった。俺のことで頭いっぱい?」
「ばっ…だ、黙れっ!!」
「あーはいはい。照れた丸井先輩とか可愛いから、つい」
「つい、じゃねぇよバカ!俺帰りたいの!離れろっ!!」
「じゃ、放課後デートッスね!」
騒ぎながらも結局二人で帰ることになった。一度覚醒したこのドS悪魔を制御出来る日は、いつ来るのだろうか。…でもまぁ、そんなお前だから俺は好きだよ。
(ね、先輩から手繋いでよ)
(やっぱ撤回)
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明治牛乳様より赤丸リクでした!大好きな赤丸を書けて楽しかったです//
明治牛乳様のみお持ち帰り,苦情受け付けております。この度は参加ありがとうございました!