「ぅ…っせんぱ、い…」
「やめろ…もう喋るな」
「で、も…俺…」
「喋んなっ…っ…死ぬなよ、あかやぁ…っ!」
やだ、やだやだやだ
なんでだよ
なんでこんなことしたんだよ
俺が生き延びられる?
お前が一緒じゃなきゃ、
意味ねぇだろぃ…っ!
わざと残酷なふりして、俺に撃つように仕向けて、…バカなくせに何やってんだよお前。
「血…止まんなっ、い…っ…やだよ赤也…っ赤也!!」
「…泣かない、で……っは…先輩…っ…いつも、みたいに…笑ってよ…」
いつもみたいに、笑って。
いつもみたいに、バカだろって。
赤也って呼ぶ声が好き。
照れたときの顔が好き。
大好きって言うと、俺も大好きって言ってくれる丸井先輩が、世界で一番好きだった。
俺の頬に手を当てて、そんなことばかり言ってくる。辛いはずなのに、すごくすごく、優しい顔をするから、やっぱり涙が止まらなくなる。笑うなんて、できねーよ赤也。
「バカ、也…」
「…うん」
「お前なんて、…っ嫌い…」
「うん」
「…っふぇ…あかやぁ…っ…」
「うん」
「好き、っ…だいす─…!」
顔を下に引き寄せられて、唇を塞がれる。何分だったのか、何秒だったのか、全然分からないけど時間が止まっているかのように感じた。
ふわっと離れる瞬間、耳元で囁かれた、"最期の"言葉。
「──…」
「っ!……っんとに…バカ也のくせに……生意気、なんだよ…っ…赤也、…あか、や…っく…っあああああああ──っ!」
好きで好きで仕方なかった。恥ずかしいから暴言ばっかだったけど、本当に大好きだった。赤也がいたから、毎日楽しかった。赤也がいたから、俺の世界は虹色だった。
丸井先輩って呼ぶ声が好き。
意地悪な顔が好き。
嫌いって言うと、はいはいって笑って、好きですよって言う赤也が世界で一番好きだった。
全てが終わった。
たくさんのものを失ったというのに、時間は止まることなく流れ続ける。
「意味、ねーよ……お前が、…幸せにしろぃ…っ赤也」
願わくば、もう一度
(会いたい、なんて)
(ありがとう、幸せになって…ブン太)