2 | ナノ


「ぅ…っせんぱ、い…」

「やめろ…もう喋るな」

「で、も…俺…」

「喋んなっ…っ…死ぬなよ、あかやぁ…っ!」


やだ、やだやだやだ
なんでだよ
なんでこんなことしたんだよ


俺が生き延びられる?
お前が一緒じゃなきゃ、
意味ねぇだろぃ…っ!


わざと残酷なふりして、俺に撃つように仕向けて、…バカなくせに何やってんだよお前。


「血…止まんなっ、い…っ…やだよ赤也…っ赤也!!」

「…泣かない、で……っは…先輩…っ…いつも、みたいに…笑ってよ…」


いつもみたいに、笑って。
いつもみたいに、バカだろって。


赤也って呼ぶ声が好き。
照れたときの顔が好き。
大好きって言うと、俺も大好きって言ってくれる丸井先輩が、世界で一番好きだった。


俺の頬に手を当てて、そんなことばかり言ってくる。辛いはずなのに、すごくすごく、優しい顔をするから、やっぱり涙が止まらなくなる。笑うなんて、できねーよ赤也。


「バカ、也…」

「…うん」

「お前なんて、…っ嫌い…」

「うん」

「…っふぇ…あかやぁ…っ…」

「うん」

「好き、っ…だいす─…!」


顔を下に引き寄せられて、唇を塞がれる。何分だったのか、何秒だったのか、全然分からないけど時間が止まっているかのように感じた。


ふわっと離れる瞬間、耳元で囁かれた、"最期の"言葉。


「──…」

「っ!……っんとに…バカ也のくせに……生意気、なんだよ…っ…赤也、…あか、や…っく…っあああああああ──っ!」


好きで好きで仕方なかった。恥ずかしいから暴言ばっかだったけど、本当に大好きだった。赤也がいたから、毎日楽しかった。赤也がいたから、俺の世界は虹色だった。


丸井先輩って呼ぶ声が好き。
意地悪な顔が好き。
嫌いって言うと、はいはいって笑って、好きですよって言う赤也が世界で一番好きだった。


全てが終わった。


たくさんのものを失ったというのに、時間は止まることなく流れ続ける。


「意味、ねーよ……お前が、…幸せにしろぃ…っ赤也」


わくば、もう一度
(会いたい、なんて)
(ありがとう、幸せになって…ブン太)


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