Merry X'mas | ナノ


──12月25日、
それは街がキラキラと輝く日


「ねぇ先輩、今からツリー見に行きません?」


部活も終わって着替えてから初めての会話は、そんな赤也の言葉から始まった。


「ツリー?」

「そうツリー。駅前のとこ、すっげぇ綺麗にライトアップしてんスよ!見に行きましょ、ね?」

「え…行っ……な、なんで赤也とツリーなんてっ」


本当は行きたいくせに、みんながいる手前素直に行くと言えない天の邪鬼な俺。これを直したいといつもいつも思うんだけど…なかなかうまくはいかない。そんな俺を俺以上によく分かってるのが、コイツ。


「先輩、」

「…なん、!?」


パンッ!と突然目の前で、まるで催眠術を解くみたいに両手を叩いた赤也。反射的に目を閉じて、次に目を開いた時、同じ目線にある大好きな恋人の顔。


「はい、先輩後輩はもう終わり。今からは恋人!分かった?」

「はっ……わ、分かった…」

「今日はクリスマスッスよ?恋人が行くとこと言えばツリーっしょ?ね、行こうよ。俺は先輩と行きたい。先輩は俺と行きたくない?」

「…っ〜分かったよ!俺も行きたい、よ…赤也と」

「ちゃーんと言えるじゃないッスか!じゃ、早く行きましょ!!」

「うわ、引っ張るな!」


勢いのままに、みんなに挨拶をして部活を後にする。悔しいけど、俺が素直になれるのは赤也の前だけっつーか…赤也が上手く引き出してくれてんだと思う。お陰で少しは"恋人らしく"、今日のこのイベントに参加できた。


駅前に着くと、そこはもう恋人や家族で溢れかえっていた。でもそんな混雑でさえ、ライトアップされた光に全て包み込まれて輝いて見えた。


「うわ…すげー綺麗…」

「へへ、来てよかったっしょ?」

「っ…そ、だな……ありがと」

「!……先輩がお礼言うとか、明日は大雪ですかね」

「死ねバカ也」

「ひどっ!!…でもやっぱ丸井先輩はそっちの方が似合ってますよ」


そういって赤也が照れたように、無邪気に笑うから、似合ってないことは分かってるけど言いたくなったんだ。俺だってたまには、…こんな日くらいは。


「…あか、や」

「ん?どうかしました?」

「俺、……赤也と付き合えて…よかった。ずっと、一緒にいて……大好き、あか─っ」

「…もー…どうして先輩って突然そういうこと言うの?」


"ほんと、心臓に悪いよ"と俺を抱き締めながら呟く赤也に、"それはこっちのセリフだろ"と返してやった。


お前のせいでずっと、
心臓うるさいんだよバカ。
でも暖かいから許してやる。


だから、お願い
ずっと離さないで──


「…ツリー、見えねぇだろぃ」

「…俺は、ツリーよりもクリスマスのこの街が好き。」

「あぁ…分かるかも」

「キラキラしてて、夢いっぱいで、…みんなの幸せが詰まったこの街がツリーを綺麗に見せてるんだと思いません?」

「ふっ…やっぱお前、面白い」


──12月25日、
それはすべての街に笑顔の魔法がかかる最上級に幸せな日


どうかすべての人が
輝けますように。


Merry X'mas
(先輩と恋人になれたのは、サンタの贈り物ッスかね?)
(んなわけねーだろぃ、ばーか)
(そっか、じゃ俺らもツリー綺麗にしましょ!)
(…おぅ)


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