緋巡を彩る自然は紅葉を終え、その美しい葉を散らせていた。
季節は秋。
卒業を控えた私たちには受験が待ち構えている。緋巡は中高一貫校だが、進学テストがありそれは入試さながらである。緋巡高校に進まず、別の高校に行く手もあったが私はここが好きなので緋巡高校に進学する事にした。他にも私と同じような人はたくさんいる。天祢も染崎くんも、れい香たちも同じだ。
ほとんどのメンバーが緋巡高校へ進む中。
一人、曖昧なやつがいた。


「まだ悩んでるの?」


幼なじみ兼彼氏の悠太だった。
今日も図書室で勉強しながら進路希望調査票とにらめっこ。図書室で勉強しているのは、家に帰れば進路の事を口煩く言われるからだそうで。
 悠太の両親は、別の高校に行くよう悠太に言っているが当の本人は私と同じ緋巡高校への進学を希望している。何より家は近いし、緋巡高校は自分にあっている、と悠太は言う。


「悠太も大変だね」
「瀬名は反対されなかったんだろ?羨ましいよ。俺は親説得しなきゃいけないからさ」
「なんで反対するんだろうね、緋巡高校は風紀乱れてるわけでもないのに…」


だよなー、と悠太が肯定しながらシャーペンをくるくるとまわす。相変わらずペン回しはうまかった。


「…瀬名はどう思う?」
「へ?」


ペンを回しながら悠太が私に問う。突然の質問に私がまぬけな声を返すと、「高校」と悠太は言った。


「瀬名はどう思う?俺は諦めた方がいいのか?親には感謝してるけど、俺は緋巡高校に行きたいと思ってる。」


まっすぐに私を見つめたまま悠太は言った。珍しくその瞳が揺れている。本当に悠太は迷っているのだ。親に反抗したくていってるんじゃない、自分が行きたいから反抗しているんだって事がよく分かった。


「…私は、」
「…」
「悠太に諦めてほしくない。悠太が頑張れば、ご両親は分かってくれるよ。」
「…瀬名…、」
「それに」


続けようとした言葉が喉に詰まる。言いたいけど、恥ずかしくて言えない…だなんて今の私は思っていた。
でも、伝えたい。
悠太が頑張れるようになるなら、こんな羞恥心捨ててしまった方がいい。


「私…悠太と同じ高校に行きたいし、」
「…っ!」


思わず悠太は回していたシャーペンを落としてしまった。いきなり爆弾発言をしたのだ、驚いてもしかたない。私が悠太の立場だったとしても、同じようにシャーペンを落としていたハズだ。(もっとも私の場合はシャーペンが落ちるだけでは済まなさそうだけど。)





「………」
「………」


しばらくの沈黙。
ふと悠太が回していたシャーペンをぴたりと止め、進路希望調査票にかきはじめた。


「悠太?」
「これでよし」


進路希望調査票には、「緋巡高等学校」の文字。どうやら、悠太は諦めずに親を説得し、緋巡高校に行く事を決心したらしい。


「ありがとう瀬名。」
「う、うん…!」


悠太は微笑むと図書室を出ていった。
これで悠太のご両親が賛成する事が決まったわけではないが、悠太に勇気をあげられてよかったと私は思っている。


(頑張れ、悠太)










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