※悠太と瀬名が付き合う前の話


50パーセント


その数字は、俺の恋が実るか否かの確率を表したものだ。
数字にしてしまえば、約半分。
だけど、気持ちの中では、簡単に半分に割り切れる事ではなかった。




「…へえ。それで?」
『どうしよう悠太…俺、あいつが俺の事好きじゃないなら、付き合えなくても、せめて友達に戻りたい。』
「けど、3日たっても話しかけられないんだろ?」


そうなんだよ…と弱々しい声が携帯から聞こえる。
小学校の頃仲のよかった奴から久しぶりに電話がきた。小学校の時から好きだったある女の子に告白したそうだが、彼女には「友達にしかみられない」と振られたそうだ。
小学校の時、そいつと彼女は結構仲がよかったから、卒業する時、てっきり俺はあいつらが付き合うんじゃないかって思ってた。
…でも、


「…やっぱり恋愛ってうまくいかないものだよな」
『なんだよ悠太、お前珍しいな恋愛を語るなんて』
「馬鹿。俺だってするよ恋愛くらい」
『…やっと気付けたんだな』
「…ああ」
『ま、俺みたいな事にはならないよう祈ってるよ。俺が見るかぎり、結城もお前の事好きだから頑張れ』
「しょうもない期待させんな馬鹿…っあ、切った…」


ブツッと電話が切れる音がし、耳から携帯を離してディスプレイを見ると「通話終了」と書かれていて、ツーツーと虚しい機械音が流れていた。


「簡単に行くわけないだろ…」


携帯を閉じようと画面を待受に変えた時、突然震えだしたそれに落としそうになりながら画面を見る。


「せ、瀬名!?」


ディスプレイには「着信」という文字と共に、瀬名の…俺の想い人の名前と電話番号が映し出される。
友達と長電話していたせいで、すっかり彼女との約束を忘れていた。


「もしもし、」
『悠太、今どこ!ずっと電話かけてるのに通話中で出ないから…』
「ごめん、今音楽室前」
『じゃあそっちいくから待ってて』
「分かった」


本当は逆に俺の方が「今から行くから待ってて」って言うもんじゃないのかなぁと思いながら、階段を駆け登り走る音が聞こえてきて、そちらの方に目をやる。


「早かったね」
「はあ…っ…疲れ、た…」
「走ってきたの?」
「…あ、うん。さっき悠太探してる時真由と会って、今日見たかった番組が夕方にやるの思い出してさ」
「…そっか」


帰ろっか
そう言ってマフラーを首にまいて歩き始めた瀬名。待って瀬名、俺、伝えたい事があって


「…悠、太?」


気付いたら、俺は瀬名の手首を掴んでいた。突然の事に瀬名は少し顔を赤らめながら驚く。


「俺、言わなきゃいけない事が、あって」
「う、うん」
「俺、瀬名が好きなんだ」


気持ちの高ぶりが、俺をこんなに素直にさせたんだろうか。
それとも、夕日に照らされた彼女の綺麗な瞳のせいだろうか。

今までずっと、この気持ちに気付いた時から、俺は怖かった。
今日、友達から話を聞いた時、もっと怖くなった。
友達いう関係さえも、幼なじみという関係さえも崩れてしまうなら、
俺は気持ちを伝えたくなんてなかったのに


「……瀬名、」


恥ずかしくて俯いてた俺は、怖くて瀬名の名前だけを呼んだ。顔なんて見れない。
どうしよう、と思った矢先、するりと俺の手の中から瀬名の腕が抜けた。
「ごめんなさい」
そう言われると思った。


「……私も、好きなの」


悠太が。

瀬名は優しく俺の手を両手で包みこんで、言った。


「あ…」
「…やっと見てくれたね」


今まで見た事ない笑顔の瀬名と目が合う。
何も、怖くなかった。





「成功率が50パーセントだとか考えてたから、ダメだったんだな」
『よかったな悠太』
「…ああ」
『幸せになれよ!』



今の確率なんて知らない。
どこかで聞いた事がある。
恋人が、夫が、妻が浮気している可能性は50パーセントだと。

俺たちに確率なんていらない。
成功率は50パーセントじゃなくて、
誰にも分からないからだ。




___


久しぶりに書いたので…(言い訳)
久しぶりのわりには長くなったな、と。
悠太と瀬名が付き合う話でした。
お題はついったの診断より








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