悠太と私は幼なじみだった。
家が隣同士で親も仲がいいから小さいときからずっと一緒にいて、幼稚園も同じところに通っていた。
でも幼稚園を卒園する頃、悠太のお父さんの仕事の都合で悠太は引っ越す事になり、それ以来悠太とは会ってなかったから、きっともう会えないんだろうと諦めていたとき、彼は私を見つけてくれた。
「…っ瀬名…?」
「…もしかして、悠太…?」
お互いに面影があったからなのか、すぐに分かった。悠太は昔とそう変わっておらず、悠太からしたら私もあまり変わってないらしい。
「父さんの仕事が落ち着いて、またこっちに戻ってこれたんだ」
「そっか、よかった」
もう二度と会えないかも、なんて思ってたから
そう伝えると「そんなわけないだろ」とデコピンされる。
悠太と再会したその日の放課後はひたすら地元を歩きまわっていた。10年ほどたつと色々変わるものらしい。悠太と「ここは駄菓子屋さんだった」だとか「公園、整備されて遊具も増えたな」とか、思い出と照らし合わせながら各所を巡る。
「やっぱりここが落ち着くなー」
「ずっと遊んでたもんね」
最終的には、家のすぐ近くの小さな公園にきていた。公園には誰もおらず、懐かしいブランコに堂々と座り込む。
「変わってないところもあるけど、やっぱり変わるものだよな」
「うん」
「今日色々まわって、少しだけ怖くなったかも」
「え?」
怖いって、何が?
そう問えば、悠太はこう言った。
形あるものいつかは壊れるし変わる。それは分かってるけど、いつの間にか俺が知らない間に変わってしまって、俺が知っていたものはなくなっていて、今の新しい形がもうこの町にすっかり馴染んでしまっているのが、ちょっと悲しいんだ
と。
ずっと地元にいた私には少しだけ分からない事だった。
「それから、」
「うん?」
キイキイと少しだけ動かしていたブランコをとめて隣の悠太を見る。
「俺、瀬名が変わってないか、怖い」
まるで子どもが母親を心配するかのような、一度見たことがある顔だった。
その顔はたしか悠太が引っ越す時、「僕のこと、忘れないでね!!」と別れを告げた時だった気がする。
「私は変わったよ」
「……」
「でも、」
悠太のこと、忘れてなかったし、悠太のこと嫌いになったわけでもない。
「ただ、良い方に変わっただけ」
「ど、どういう意味だよ瀬名!」
「そのまんまだよ、さて、帰ろうか」
いつの間に変わってたんだろう(この町も、彼女も)
(彼女は今、素敵な女の子に変わったんだよ)
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