残り香
「やめてくんない」
それ、と言われて指で示されたのはミザイストムの持つ煙草だった。換気扇があるのだから良いじゃないかと反論しようとしたが、確かにまだ未成年であるテルドの体にこの
煙は悪影響だ。と、言っても当の本人は悠々とミザイストムの仮眠用ベッドにうつ伏せになって本を読んでいる。相変わらずムカつく子供だ。
ミザイストム仕方なく煙草の先にすり潰し、それをゴミ箱に投げ捨てた。
「ちょ、近寄んな、臭い」
「上司に悪口言うな。言い付けんぞ」
「お前の直属じゃないし。それに、言っても関係がバレてお前が殺されるだけだと思うけど」
「確かに、あのネズミにバレたら色々と厄介そうだ」
そう言ってミザイストムは珍しく笑い、うつ伏せに寝たままのテルドの上に自分の上半身を預ける。予想外の重さに、下からぐえっと呻き声が聞こえた。
「臭っ重っ死ね!」
「良いじゃねえか。慣れれば平気になるぞ」
「そういう問題じゃない!」
長文の台詞にならないのは本気で怒っていない証拠だ。こういう所がまだ可愛げがあるかもしれない。
「今日はもう仕事上がってるだろ?」
「一応、な。副会長が追加受け取ってなければだけど」
追加とは、他所(この場合は十二支ん)から回されてきた仕事を代わりに受け持つ事。
テルドが居る時はパリストンがよく追加を受け取って彼に回すので厄介である。単なる嫌がらせだ。
「今日、一緒の布団入ろうぜ」
「その口説き文句嫌だ」
「じゃあ、ストレートに。抱きたい」
「やだね。お前ん家遠い」
「・・・・」
「あっ、ちょ、痛っ」
慌てて脇腹を掴んでいる手を剥がし、続いてミザイストムの顔を押し離した。
本当に煙草臭いから離れてくれと文句を言い付けると、問答無用で口を塞がれた。意味が分からん。そして、ヤニ臭い。
念を込めた蹴りをミザイストムの腹にかましてやろうと試みたが、片手で簡単に止められた。
「(・・・ま、いっか)」
大人しくされるがままなのも悪くない。何より、珍しくミザイストムがやる気なのだ。好きにやらせておこう。
「別に良いけど、匂い残ったら副会長にバレるぞ」
「げっ」
珍しく、テルドもやる気だし。
・あとがき
朝、煙草臭い人が居たので衝動的に。
ミザイストムさんよく見なくても男前だよね!っていうだけの話。
何だかんだ言って、シャルナークとくっつける気のないこの管理人。いい加減にしろ←
2012/12/7