記念打 | ナノ

おこたつ



「いたっ」

その突然な悲鳴に特に答えるわけでも無く、テルドはウサギの形に切られた林檎をまた1つ口に運んだ。

「え、ちょっと。無視?無視なの?ていうかシャルナーク君、僕の足蹴ったよね、今」
「や、ちょっと何言ってるか分からない」
「目上の人には敬語を使おうって、習わなかったかな?それとも流星街出身だから教育受けられてないのかな?」
「敬う価値も無い人間に敬意を表す敬語なんて使えるわけないでしょ?」
「だあああ煩いわお前ら!」

フォークをパリストンに向けて投げつけるが、案の定簡単に止められてしまう。

「ていうかウサギの形の林檎食べるなんてテルド可愛いね、流石僕の弟」
「それ俺が切った林檎なんだけど」
「テルド、もうそれ食べなくていいよ」

喚く2人を構う事無く、テルドは何故こうなったかを鮮明に思い出した。
一日前、目が覚めた。目が覚めた時には、既にこの、部屋にしては少し大きい室内に彼は居た。中心にこたつ、周りには白いベッドやクッションが数個あるだけ。テレビや時計、窓などの時間の情報が分かる物は一切無し。
そして最悪な事に、室内にはテルドの他に犬猿の仲であろうシャルナークっとパリストンの姿。益々意味が分からなかった。
ただ、唯一あった情報が書置きの様な物には、「合計24時間、共にこたつに体の一部を入れた状態で過ごすべし。制限時間は168時間」と、それだけ。最高、1週間も此処で過ごさなくならなくてはならないという事だ。
差出人は不明。勿論、何が目的なのかも全く分からない。分かるはずも無い。それほど、この3人はこれといった特別な接点も無かったのだ。

無視してタイムリミットを迎えてみようかとも考えた。食料が十分ある事は確認済みである。だが、トイレはどうするのだ。その結論に至り、結果大人しく従っているという事になった。

「とりあえず1日だ、1日をこのまま過ごせばこんな悪夢も終わるっていうか無駄に動いて俺の足にも触れるんじゃねえよ気色悪い。死ね」
「あ、ぶつかってた?ごめん」
「お前はしゃべらないで下さいカス」
「何処かぶつかって痛かったかな?」
「だからしゃべるなって言っ・・・いッ!?」

その時、こたつの机部分が、何かの衝撃により大きな音を立てた。その振動にシャルナークが目を見開きながら何事かたこたつ内部を覗く。テルドの膝は立てられており、音はテルドの足が机にぶつかったせいで起きたのだと分かった。そして見えたもう一つの光景。パリストンの足が、テルドの足裏を擦っていた。

「・・・・変態」
「シャルナーク君には関係無いでしょ。こんなの兄弟のスキンシップだよ」
「誰が兄弟っ・・・あ、あ、っあ」
「何処が兄弟だよ」

シャルナークが呆れる間もパリストンの足は丹念に足裏を堪能した後、どんどん奥へと進んでいく。彼の指先が大腿を伝っていく度にテルドは青ざめた顔で小刻みに震える。反論しようと口を開く度に聞きたくも無い喘ぎ声が響き、シャルナークは耳を塞ぎたくなった。

「ねーお二人さん。そういうのは無事に帰ってからにしてくんない?凄い嫌なんだけど、俺の立場」
「もしかして嫉妬かな?君が望むなら混ぜてあげてもいいと思ったのだけれど」

シャルナークの肩が僅かに反応する。
まさか。テルドは確かに悪寒を覚えた。

「それ、本当?」
「!?シャルナークお前何をッ」
「勿論。嘘はつかないよ。テルドを押さえてくれるだけで良いから」

その瞬間、3人の空気が一変する。テルドは体を捩りこたつから脱出しようとし、それをすかさず2人が押さえこむ。すかさず硬で反撃しようとした彼の手足を硬で押さえ、床に仰向けの状態で寝かせた。

「おまっふざけるな何こたつから出てるんだよこの部屋から出られなくなってもいいのか」
「君だって出ようとしたじゃん。ていうか書置き?みたいなのに書いてあったでしょ?合計24時間だって」

盲点を突かれ、テルドは思わず顔を青くする。パリストンもいつの間にかテルドの足を押さえながら彼の近くに移動していた。両隣に挟まれる状態で座って居た為、テルドは簡単に捕まえられてしまう。早く其処に気付いていればよかったと、テルドは改めて後悔した。だからと言って、密室から逃れる術は無いのだが。

「俺先に入れていい?」
「ん、良いよ。後の方が中解れてるし」

最低だこいつら!
心底、そう感じた冬。最悪な思い出が出来た。








・あとがき
3万打で頂いたモカ様からのリクエストです!まさかこの3人が集まる時が来るとは思っていませんでした。書いててすごい楽しかったです笑
そしてこれは甘い・・・のか?ギャグ・・・なのか?ちょっと微妙な気もしますが、モカ様が笑ってキュンキュンしてくれたら嬉しいです。
では、リクエストありがとうございました!またのお越しをお待ちしております。


2/8/2013




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