48 哀愁



もう二度と君は秘書に使わない。

ガンッ、と重い石で後頭部を殴られた様な感覚。テルドはふらふらとした足取りで、シャッターの降りた店の前に座り込んだ。雨に長時間打たれていたせいで、彼の体はかなり冷えてしまっていた。これからどうしよう。その事しか、今の彼は考えられなかった。
シャルナークはパリストンと電話した。テルドの秘書という立場を無くせば、無事に帰す。理不尽な条件だったが、パリストンはすぐに了承した。これには、テルドも驚愕だで開いた口が塞がらなかっただろう。こんなにもあっさりと、長年築き上げてきた地位を降ろされたのだから。これで、ただの下っ端協専ハンターに逆戻りだ。更に一つ星ハンター認定証まで破棄されてしまった今、恐らく今の彼はメンチよりも地位が下だ。
悔しかった。そして、何も抵抗せず涼しい顔をしていた自分に猛烈な怒りを感じた。

きっと、協会に戻れば笑い者にされる。馬鹿にされるのだけは、本当に嫌だった。それはテルドの自己勝手な気持ちだったが、それは何が何でも嫌なのだ。
テルドは冷たく濡れた前髪をかき上げ、閉まりっぱなしのシャッターに肩を預けた。

「・・・・・。」

鳴り響く携帯電話の3コール目に出る。遅い、と第一声を放ったのは、想像していた人物とは大幅に違った。傲慢で、少々しわがれた声。本雇い主のエヴィ氏であった。誰よりも我儘な性格の彼は、自分が待つ事を考えたりなどしないだろう。機嫌を損ねない内に謝罪し、用件を伺う。すると、エヴィ氏は空気一変して明るい調子の声でしゃべり始めた。あぁ、やはり彼は人間性が掴めない。
そして、彼は恐らく笑顔でこう言った。

君を是非とも幻影旅団暗殺チームに組み込みたい、と。

ついに、終わる時が来たか。
テルドは、ゆっくりと息を吸い込んだ。




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