そう、これは私たちの運がついていない日のお話―――
私たちはとある商人の依頼で、これまたとある宝石を探してほしいという依頼を受けたことがきっかけだった。
その宝石は珍しい代物で、市場では中々出回らない幻の宝石と呼ばれていた。
しかし商人の話によると、この鉱山跡地にはその幻の宝石があるという噂を何処かから聞きつけたらしいのだ。
ただ、中には魔物が蔓延っている為にカイルに頼んだが運のツキ…。
こうして私たちは、例の宝石の取れるという噂の鉱山跡地にやってきていたのだった。
「よーし見つけるぞ!」
「ホントにあんのかよ…。」
「ロニ!だって、あの商人さんは言ってたよ?ここにあるって。」
「バッカだなぁ…。噂に踊らされてるだけかもしれねえだろ? なぁ?お前もそう思うだろ?ジューダス。」
「ふん、カイルに頼まれたのが僕達の運のツキだ。さっさと探してここを出るぞ。」「なに急いでんだよ、ちょっとくらいゆっくりしよーぜ?」
心なしかジューダスの急ぐ気配に仲間達が首を傾げ不思議そうにするのを、スノウが苦笑してみていた。
「ジューダスが知ってるという事は、やはりそうか。」「なんだよ、スノウまで妙な事言いやがってよ?」
「皆、急いだほうがいい。ここは皆も知っての通り"鉱山跡地"だ。」「そうだな。それが何だってんだよ?」
「ここが、鉱山跡地になった理由だよ。ここは少し前までオベロン社が使っていた鉱山だった。それが今じゃ跡地になっている。その訳は―――」私はそのまま近くにあった小石を拾い、天上の壁に向けて投げた。
するとその小さな小石が当たっただけで、天井が勢いを増して崩落し、仲間達が焦ったように散開する。
「おい!あっぶねーだろーが!!!」
「そういう事だよ。こんな小さな石一つでも崩落するんだ。宝石を取るときに壁や地面に衝撃を与えれば……皆仲良くお陀仏だろうね。」「っておいおい…!俺たちそんな危険な依頼、受けちまったのかよ!?」
「でも、早くしないといけない理由にはならないわよね?」
「崩落の可能性があるという事は時間制限があると言っても過言じゃない。奥に行けば行くほど、入り口の様子は分からなくなる。何処か崩落していて出れなくなっていた、なんてザラにあるからね。それでジューダスが危惧していたのさ。時間と共に壁が劣化するのを知っている彼だからこそ、その危険性を良く知っていた、という訳さ。」「うっへえ…。」
「ど、どうすればいいの?だって衝撃を与えたら崩れるのよね…?」
「まぁ、脆いところって言うのは見分けがつくものばかりだから、心配なら私かジューダスに聞いてくれ。そこが衝撃を与えても大丈夫なのか見当つけるよ。」「「「はーい。」」」
カイル、ロニ、ナナリー、リアラが不安そうに中に入っていったのを見届け、どうしたものかと暫くその場で壁や天井を見渡しているとジューダスが私の手を引いた。
どうやら考え込んでいる私に痺れを切らせたようだ。
「おい、さっさと行くぞ。」『気を付けてくださいよ?!崩落と共に仲良く死ぬ…なんて御免ですからね!!?』「ならお前だけここに置いていこうか?」『あ、何でもありません…。』流石に置いていかれるのはまずいと思ったのか、シャルティエが一言も発さなくなった。
それに鼻を鳴らし、ジューダスは私の手を引いて中に入る。
坑道の中は冷える。それなのに彼の手は反対に温かった。
「………。」「……。」二人で黙って奥まで進んでいく。
しかし分かれ道となり、仲間達がどっちに進んだのか分からない。
シャルティエがお得意の探知を始めようとしたとき、何処からか崩落の音が聞こえてくる。
「…シャル、何処が崩落した。」『えっと…待ってくださいね。今、検索しています。』ピカピカとコアクリスタルが輝く中、スノウもサーチで探知するとウロウロとしている仲間達の他に、別の人間の反応も引っかかる。
…どうやらその信憑性の薄い噂を嗅ぎ付けた他の人間もいたらしい。
「…カイル達が別の人物と接触しているようだね。」「噂を嗅ぎ付けた馬鹿どもか。」「どうやらそのようだね。そして…どうもその馬鹿どもと一緒にカイル達も崩落に巻き込まれて閉じ込められたようだね…?」「は?」『坊ちゃん。スノウの言う通りです。カイル達が閉じ込められています。どうやらさっきの崩落の音はカイル達の居る場所の近くで起きたようです。』「あの馬鹿…!」ジューダスが慌てて音のした方に向かっていくのを黙って見届け、私は再び探知を開始した。
どうも、皆のために他の避難経路を探しておいた方が良さそうだ。
『ご、ご主人様…!』
「ん?ノーム。」『じ、地盤がかなり緩くなっています…!恐らくこの坑道はもう崩壊寸前かもしれません…!』
「……困ったね?」依頼を放棄するわけにもいかないし、かといって崩落に巻き込まれて死ぬのもなぁ…?
私がそのまま探知を続けていると、どうやらジューダスがカイル達の場所に辿り着いたようで、崩落した箇所も彼が難なく突破したようだ。
恐らく地属性を得意とするシャルティエの力を借りたのだろう。
「…流石だね、ジューダス達は。」『ちょっとちょっと、そんなこと言ってる場合?』
「グリムシルフィも危険だと感じる訳か…。」『だってノームがそう言ってるって事は、かなりヤバい状況じゃん?』
「…因みに、風はどっちから吹いてるかわかるかい?」『そんなの簡単だよ。スノウの背後、それから今のスノウから見て11時の方向。そこから風を感じる。吹き抜けがあるんだろーね?』
『それに貴女にとっては悲報とも呼べる報告があるわ。』
「え、シアンディームまで…?」精霊の全員が全員ではないが、そうやって危険を呼び掛けてくるので途端に不安と化す。
『この近くに水源があるわ。もし崩落した場所が悪かったら、濁流と共に押し流されてしまうでしょうね。』
「…!」前世での最期を思い出し、途端に体が震えた。
しかしすぐに持ち直し、腕を摩っていると向こうから慌てた様子でカイル達が現れた。
そして目敏い彼が私の行動を見て、表情を険しくさせる。
言い訳しようとした私だったが、どうやら、そうも言ってられないようだ。
「スノウ!魔物が!!」
「戦闘準備に入りますか…。」「お前ら!絶対に壁へ攻撃を当てるな!!崩落するぞ!」「「「「うへぇ!/はい!/うん!」」」」
彼らも順次、攻撃の姿勢を見せる。
そして相棒を構えた私に彼からの叱責が飛ぶ。
「特にスノウ!!お前の術は広範囲すぎるから注意しろ!!」「分かってますよ…っと!」無詠唱で放った魔法は坑道内で大人しめの術。
しかし敵を蹴散らすには丁度良かったらしい術に、敵の数があっという間に減っていく。
それにロニが口笛で感嘆し、カイルも褒めちぎってくれる。
「ジューダス!この坑道内のどこかに水源がある!もし崩落した場所の近くに水源があれば濁流となって飲み込まれるみたいだ!!」「…!!(それであいつが腕を摩っていたのか…!)」『そ、それって…!』「シャル、言うな。あいつの顔が強張るだろうが。」『は、はい!すみません。』小声で彼らが何かを話していたようだが、こちらまで届くはずもなく、私は次なる魔法を詠唱していた。
しかし周りに居た、噂を聞き付けた商人の一人が何を思ったのか爆弾を手に取った。
「こ、こんな所で死ぬってんなら…!いっそ…!!」
「ばか!何早まってんだ!!」
「…!」すぐに詠唱を切り替えて水属性の魔法を使う。
目標は…あの爆弾……!
「___湿気れば使えないだろう?ディフュージョナルドライブ!」商人の上から回復の雨を放物線上に滴らせる。
雨で湿気た爆弾は導火線ごと雨に濡らし、使い物にならない様にすれば商人が狂ったように叫んだ。
代わりに雨が降り注いだことで周りに居た仲間たちは回復し、お礼を言ってくる。
「「「ありがとう!スノウ!」」」
「さ、戦闘に集中だ!」「「「「おう!/うん!」」」」
ジューダスも商人の方を向き、遠慮なしに舌打ちをしていた。
どうやら他に気を使わなければならない分、彼も内心イライラしているようだ。
それに気付いた私はすぐに詠唱を開始する。
「___揺蕩う波の抱擁、ディスペルキュア!」「『!!』」暖かな光が包み込み、ジューダスが気付いたように視線を向けたのでウインクをしておいた。
それにフッと笑ってジューダスが攻撃を敵にお見舞いしに行った。
『さっすがスノウ!すぐサポートに回ってくれます!』「早いところケリをつけるぞ!」『はい、坊ちゃん!』『「___ネガティブゲイト!」』全てを飲み込む闇の球体が現れ、魔物が数体飲み込まれていく。
ようやく勝利を目前にして仲間たちの気が緩んだ瞬間、何かが破裂した様な音がして私のほかにジューダスも息を呑んだ。
それは煙幕のようなもので、煙幕と言えどそれは爆発物に違いない。
そして辺りは煙幕に包まれると同時に、ゴゴゴゴゴゴゴ…という低い音が辺りに響く。
どうやら狂った商人が煙幕用の爆弾を放ったようだ。
「はははは…。これで…ぜんいん、お陀仏だ…!!」
「ばっかやろー!!」
他の商人から貶されても尚、その商人は狂ったように笑っていた。
急いで仲間達に逃げる指示を出し、叫ぶジューダス。
逃げていく仲間達を見ながら私は更に詠唱を唱えた。
「___崩落を堰き止めよ、ノーム!」『は、はははははい!』
重役を頼まれてしまったという震える声音でノームが具現する。
そうしてノームが地面に潜り込み崩落を止めようとしている傍ら、ジューダスが私の手を掴んで走り出す。
強く掴まれた手は離せそうになく、しっかりと繋がれていることに不思議とホッとした私は、ジューダスと共に出口へと駆け出す。
__あぁ、なんて運のついていない。
そんな事を今更思ってもしょうがない。
だけどそんな私たちに新たな試練が訪れてしまった。
目の前の出口が別の場所の崩落によって更に崩落を呼び、土石流や岩で塞がれてしまったのだ。
絶望する仲間達の前に立ち、銃杖を構えた私は何振り構わず魔法弾を使用する。
かなり使ったマナのおかげで僅かに開けた出口に向けて走るよう叫んだ私は後ろを振り返る。
商人たちはどこかの崩落に巻き込まれたのかついてきてはいないようだ。
「他を気にしている場合か!!!急いで出口に向かうぞ!!」『あわわわ…!坊ちゃん大変です!!水が、水がーーー!!!』シャルティエがそう言った瞬間、私たちを襲ったのは濁流だった。
音はずっとしていたが、さっきまでその水が見えていなかっただけに、思わぬ災害を受けることになった私達。
すぐにトラウマが蘇ってしまい、口から空気を出してしまう。
そして前世と同じく、肺の中に水が入り込んできて苦しくなる。
「(―――あぁ、冷たい…。もう、…だめかも……。)」しかしそんな中でも、諦めないと云わんばかりに抱き締めてくれる存在が居た。
だからか、少し……ほんの少しだけ、安心したんだ。
「――――!」更に強く抱きしめられた感覚を最後に、私の意識は飛んで行ってしまった。
‥‥・*・‥‥………‥‥・*・‥‥………‥‥・*・‥‥
濁流に巻き込まれた僕達だったが、濁流がある意味功を奏して出口を塞いでいた土石流を押し流してくれていた。
そのまま外に押し流された僕たちは、息も絶え絶えになりながらお互いに無事を確認しあっていた。
僕はそのまま腕に閉じ込めていたスノウの状態を見る。
しかし、彼女はぐったりした状態で僕の腕の中に居て、全く動かなかった。
それどころか体が冷たく、息もしていない事に僕は気付いてしまった。
「っ?! おい!!スノウ!!!しっかりしろ!!」「……」『ぼ、坊ちゃん…。スノウ…息をしてない、です…よ…?』急いで心臓マッサージを行う。なりふり構っていられない僕は次に人工呼吸を施していた。
しかし何度やろうと、スノウが息を吹き返すことがない。
「カイルー!!しっかりしろー!!」
どうやら向こうでも重傷者がいるようで、向こうでも慌てて心臓マッサージを行っているのが見える。
僕はひたすら目の前の彼女へと治療を施した。
「はぁっ、はぁっ!頼むっ…!息を、してくれ…!!!スノウ…!!!」汗を掻きながら一生懸命、彼女へ救急措置を行った。
しかし―――
「スノウっ!!」『スノウ!嫌です…!嫌ですよ…!!?何で息を吹き返さないんですかぁぁ?!!!!』苦しそうに叫んだシャルの言葉に、僕も表情を険しくする。
何分、何十分やろうとも彼女が息を吹き返すことは無かった。
僕が諦めかけたその時、
「―――――――ごぽっ、」「っ!!!」彼女が口から水を吐き出した。
しかしまだ咳き込む様子がないところを見ると完全じゃないようで、再び息をしていない彼女を見て僕は慌てて止めていた手を再開させる。
何度も、何度でも僕は救急措置を行った。
そして、
「ごぽっ!!かは、」『「っ!!!!!」』身体を仰け反らせ、咳き込んだ彼女に僕は無意識に涙を流していた。
水を吐き出そうと彼女が苦しそうに息をし、咳き込んでいるのを見た僕は背中を叩いてやり水を吐き出すのを手伝ってやる。
「ゴホゴホっ!!……はっ、はっ、はっ。」「スノウ…!!」『良かった…。良かった、です…!!!!』「うぇ、はっ、うぅ…。あー…、死ぬかと思った…。」顔を真っ青にさせながら、スノウは力なく横たわり、息を整えようと必死に呼吸をしている。
僕は彼女を抱き起し、背中を摩る。
それに力なく笑った彼女は僕を見て、今出来る精一杯の笑顔を見せてくれた。
「はぁ、はぁ、ありが、とう……ジューダス…。」「全く…、お前は、世話が焼く、んだから…」「はは、は…。ご、めんって……レディ…。」泣いている僕の顔を見て、彼女は苦笑いをして涙を指で掬い取った。
その瞬間、彼女は意識を失い自然と体が倒れていく。
それを慌てて支え、彼女の名前を呼ぶ。
「おい…!スノウ!!」『スノウ!!?』「おい!そっちは大丈夫か?!!」
ロニが意識のないカイルを抱え、こっちに寄ってきたがスノウの状態を見て顔を真っ青にさせた。
ナナリーとリアラも息を呑んでスノウを見たが、息はしているのでその事を伝える。
僕たちは意識不明者二人を抱え、急いで町へと戻る事になったのだった。
……しかし更なる不運が僕たちに襲い掛かる。
「何〜?!!医者が居ないだとーー?!!」
ロニがキレた様子で叫んだのも無理はない。
僕だって叫びたくなったのだから。
町に戻った僕たちだったが、肝心の医者が遠征をしていて町に一人もいないというのだ。
ここには急患が居るというのに…!
「ど、どうしたら…!」
口もとを手で押さえ、泣いているリアラにナナリーがロニに提案する。
「どっか他の街で二人を見てもらった方がいいんじゃないのかい?!」
「バッカ…!この近くに町はねえよ!!」
「じゃあ、ここの医者はどこに遠征に行ったの…?」
「近くに切り立った崖がありまして、そこで地盤沈下が起こって何人も重傷者が出ているようです。」
「……地盤沈下、だと…?」『そ、それって、坊ちゃんたちがいたさっきの坑道の上の事じゃないですか?!!』「ど、どうしてこんな時に地盤沈下なんて…。」
「話はあとだ!お前ら、行くぞ!」僕はスノウを抱え直し、急いで外に向かった。
それに合わせて後ろからあいつらも追いかけてくる。
「おい、どういうことなんだよ!ジューダス!」
「急な地盤沈下がそうそうあって堪るか!!先ほど僕たちが居た坑道の上…そこが地盤沈下の現場だ!」「「「…!」」」
「じゃあ、そこに行けば…」
「医者が見つかるってことだね!さすがジューダスだよ!」
「分かったなら足を動かせ!!急いで向かうぞ!!」僕たちは先ほど居た坑道の上である崖を目指す。
そこには重傷者がたくさんおり、悲惨な状態が目の前に広がっていた。
被害に巻き込まれた人々のケガなどをロニやリアラが回復を使ったおかげで、意識不明者二人の治療も早い段階で医者が診てくれることとなった。
「二人とも、いつから意識が?」
「つい1、2時間前だと思うぜ?」
「分かりました。二人を簡易ベッドに運んでください。」
僕たちは言われた通りに二人をベッドへと運び、医者の診察が終わるのを待った。
しかし、更なる悲劇が僕たちに襲い掛かる。
ゴゴゴゴゴ、という地響きが辺りに鳴り響き、途端に警戒していた僕たちだったが、その地響きはすぐに止んだ。
結局何だったんだ、と警戒を緩めた僕達。
そこへ、急にガクリと下へ下がった感覚がした。
「…まさか、地盤沈下か…!!」「「「ええ?!!」」」
こんな時に?!と叫ぶ仲間達と必死に何かを指示する救助隊員たち。
その言葉は避難しろという言葉だった。
医者も慌てて器具を持ち、重傷者たちを避難させるように指示を出したことにより、結局診てもらえるはずだったスノウ達の診察が遅れてしまう。
僕たちもスノウたちを担ぎ、急いで場を離れようとした。
しかしそんなに甘くなかった。
地盤沈下が思ったよりも早く来て、その場にいた全員が下へと落ちていく。
せめてスノウを守ろうと僕が抱き締めれば、流石に浮遊感がそうさせたのかカイルとスノウがパッと目を開き、今の状況を飲み込めず「ええ?!!」と叫ぶ。
しかし軍人上がりの彼女は想定の範囲外の状況にもかかわらず、指輪に話しかけていた。
「___うぐ、気持ち悪いけど……全員を、風で守れ…!グリムシルフィ!!」『ちょっと!嘘でしょ?!!』
召喚されたグリムシルフィが言われた通りに下から風を巻き起こし、全員をふわりを巻き上げる。
そして全員が無事着地することが出来たことに、その場で歓喜の叫び声がいろんな場所から上がる。
しかしフラフラとしたスノウは顔が青いを通り越し、土気色へと変貌させるとその場で倒れようとするため僕は抱き締めていた腕をそのままに、力を強め支えた。
「ちから、つか……すぎ、た……」「馬鹿っ!!!」身体が徐々に冷えていく彼女。
本当にまずい状況に医者へと僕は叫んだ。
「急いでくれ!!急患なんだ!!!!」「わ、分かりました!!」
簡易ベッドも地盤沈下と共に消え去ってしまったため、簡易的な布を敷いた場所へと彼女を連れて行きそこへ寝かせる。
そして医者が別の人に点滴を打つよう指示をしたのを見て、僕はようやく一息つく。
これで彼女が元気になればいいが…。
『なんていうか…不運続きですね、今日…。』「……あぁ。」既にある疲労感に眉間の皺を寄せた僕は、その場で座りスノウの様子を見ながら休憩をとる事にした。
……もう流石に何も起きないと信じて。
点滴をしていく彼女の顔色が本当に徐々に回復していくのを見て、ホッとする自分が居た。
つい先ほどまで生死の境を彷徨っていた彼女が、こうして息を吹き返すことが出来て………本当に良かった。
「――――もう宝石探しは懲り懲りだ。」向こうではカイルが目を覚ましたのだろう。
カイルの兄貴分を語っているあいつが叫んでいるのを、その場でじっと聞いていた。
【坑道、濁流、巻き込まれ注意報】
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「早く目を覚ませ、阿呆。」___
「…うぅ、もう…坑道…は、こり…ごり…」___
「……フッ。そうだな。」_24/40