Tales of Zestiria | ナノ


 『初めまして、久しぶり』



※管理人がまだ最後までプレイしてない時の小説です。
口調、矛盾などあると思いますがご了承下さい。







これは決まっていたこと。
いつか元の世界に帰らなくちゃいけないってこと。
あんなに戻りたいと思っていたのに、どうしてか今はそんな気分になれないの。
あなたは、私が元の世界に戻る選択をしたらどうするのだろう。


「え?もし向日葵が元の世界に戻らなくちゃいけなくなったらどうするか?」
「うん。スレイさんの言葉が聞きたくって。」
「うーん。本当はここにいて欲しいけど、それって俺の我儘だろ?向日葵の願いが叶うんだから俺は黙って見送ると思う。」
「そっか。」
「いきなりどうしたんだ?元の世界に戻れそうなのか?」
「ううん。違うの。さっきも言ったけどスレイさんの言葉が聞きたかっただけ。」
「ふーん。」


それ以上は何も言わず立ち去る。
寂しい気持ちを隠して。
歩いて辿り着いた場所は何度も夢見た場所。
ここは私が元の世界に戻る為の場所…。
ぽっかり深い穴が開いていた。
深くて何も見えないくらい。
私がこの穴に飛び込めば夢の通り帰ることが出来るのだろう。
無駄に自信を持っているのはやはり帰りたいという気持ちが強いから?
後ろを振り返っても誰もいない。
今なら。
誰にも気付かれずにいける。
でも、一緒に旅をしてきた仲間には声を掛けていきたい。
葛藤が元の世界に戻ることを躊躇させる。
言えばいいじゃない。
でも別れにくくなるわ。
そんな思いを振り切り目を閉じ、地から足を離す。
さようなら。
居心地の良かったあの場所。
浮遊感が襲ってくると思いきや腕に衝撃が走り思わず腕を見る。
正しく言えば見上げた。
誰かが私の腕を掴んでる。
眩しくて見えない。
誰?


「勝手に居なくなるなよ!」
「っ?!」


声の主に聞き覚えがある。
だってさっきまで話していたのだから。
でもどうしてここが。


「スレイさん。離して下さい。スレイさんまで落ちますよ!」
「離さない!せめて俺たちに言ってから行こうよ!」
「そんなことをしたら別れにくくなるから…。」
「でも、向日葵が居なくなったら皆心配すると思う、けど?」
「そうか。そうだね。皆優しいから。」
「とにかく引き上げるからもうひとつ手を貸して!」
「…ごめんなさい。」


腕の力を抜けば段々とスレイさんの手を擦り抜ける。
汗が滲み始め慌てる彼に精一杯の笑顔を向ける。
手が離れあっという間に穴の中へ。


「向日葵っ!!」


そんな顔をしないで。
これで、私は…












日常が戻った。
前みたいな学校生活が始まって、授業を受けて、帰って宿題して。
本当に色一つない生活。
あそこでの生活は色が付いていた。
何より、毎日スリルがあって仲間たちとの会話も楽しかった。
戦闘には参加できなかったけど、それでも皆は嫌な顔一つせず、守ってくれた。
本当に感謝しきれない。
だからこそ私という重荷を持って欲しくなかった。
私がいなければ彼等はもっと先へ行けたのだろうから。


「ただいま。」


誰もいない空間に何を言おうが返答が返ってくるわけでもないのに、それは日課だった。
答えのない家を寂しいと、涙を流さなくなったのはいつからだろう。
中に上がり部屋へ入ると懐かしい声。
そんなはず…ないのに。
きっと気の所為だと言い聞かせて。


「おかえり。」


気の所為なんだ。
彼がこんな所にいるはずない。
私は彼等と決別したのだから。
私はこちらの世界を選んだのだから。
なのに。
涙が出て止まらない。


「誰なの。」


いつからだろう。
夢だと言い聞かせて何もかも忘れようとしてたのは。


「誰だと思う?」


いつからだろう。
また向こうの世界にいけると期待していたのを諦めたのは。


「わから、ないわ…。聞いたこ、…のない声。」


いつからだろう。
彼の暖かさを感じなくなって感触さえ忘れてしまったのは。


「俺は忘れた事無かったよ。一度も。」


聞きたくない。
これはまた夢なのだ。
現実を見なくちゃ、生きていけない。
彼が私を忘れたことなかったなんて、そんな、
都合の良い話し…。


「私は初めて…なの。その声も、あなたの名前も、」


「そっか、じゃあ、初めまして!俺、スレイって言うんだ。」


後ろを振り返れば眩しい笑顔で手を出している彼。
私はその手を取ることも返事を返す事も出来ない。
息がつまる。
これは自分が見せている幻覚なのだと。


「違、う。」
「ええ?!本当に忘れたの?」
「違う…、覚…えて、る。だけどそんな…」
「信じられない?」
「うん、これは夢なんでしょう。私が自分の都合の良いように作った夢だ。」
「夢じゃないよ。俺、あの穴から来たんだ、こっちに。向こうは平和になったから俺は真っ先にあの場所に行って、まだ穴が空いてたから向日葵みたいに落ちてきた!」


優しく私の頬を包んでニカっと笑う彼に力のこもらないパンチを繰り返す。
あなたは私の心を掻き乱す。
どうしてくれるのだろうか。
私は、力の無い声で


『初めまして、久しぶり』









お題『君はよく頑張ったよ、その一言が欲しくて』or『初めまして、久しぶり 』








お題診断メーカーから。
どちらかを選ぶとのことでしたのでこちらを。
しかしもう一つも書き上げていきたいと思います。


今回のヒロインの心情は複雑かつ、繊細にしました。
お題を見て何を思ったか。
なのでヒロインの心情をひとつひとつ大切に書き上げていきました。
始めはわりとのんびりで。
後半はシリアス気味でかつ甘い感じを。
こちらに来てからは『初めて』会った。
前から知り合いだから『久しぶり』と。
わかりましたか?
拙い文ですみません。





管理人・エア



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