きっと、彼女は俺様から離れていってしまうのだ。



彼女の白い手はきっといつか俺様の手を離しどこか遠い場所に行くのだろう。



だから、







いつも通り、ドロシーはティータイムの準備をしていた。


「ヴォルー今日は何飲むー?」

ティーカップと茶葉の入った袋を持ち、いつも通りの笑顔で聞く。

「お前の好きなものでいい。」

「えー?そう言われるのが一番困るんだけど…んーまあダージリンでいっか。」


面倒臭そうに決め、慣れた手つきで紅茶を淹れる。

(途中、茶菓子が無い。と煩かったが太るぞ。と諭すと諦めたようだった。)





ティータイムを終え、ドロシーと他愛もない話をしているとふと、自分の中でドロドロとした感情が生まれた。

それはドロシーの話を聞くにつれ胸の中で広がっていく。



ドロシーの話はホグワーツで最近よく話すという男の話だった。

昨日は忘れ物をわざわざ届けてくれただの授業中に分からない所を教えてくれただのそんな話ばかり。



自分でも分からないこの感情が煩わしく、同時に恐ろしくなった。

(ドロシーがもし俺様の傍から居なくなったら―…?)



自分でもおかしいとは分かっているが、色々な感情が混ざり正常な判断が出来なくなってしまったのだろう。







笑顔でその男の話をするドロシーのしなやかな手を取り、一本の指に齧り付いた。





ドロシーは状況がよく分かっていないのか少しの間呆然として数秒後、絶叫した。





「ちょおおおお!!!?痛いっ痛いってばヴォル!!血出てるから!めっちゃ血ぃ出てるから!!!ぎゃあああああああ!!!」



口の中は血の味で満たされ、それでも齧り付くのは止めない。本当に指が千切れてしまうのではないかと思うほど。


「ヴォル本当に痛いから!!!ちょ離してええええ!!もうっほんと……ヴォル?どうしたの?…ヴォル?」




視界が歪んでドロシーの顔がよく分からなくなった。ああ、情けない。闇の帝王ともあろう俺様が。

「ヴォル?指、痛いから。ね?…ヴォル?」


やっと離した指には痛々しい深い歯形が残った。




「誰にも、渡したくなかったんだ。」








齧り付いたのは左手の薬指。その歯形はまるで指輪のように見えた。




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