クリスマスパーティーがしたい、とドロシーが言った。

「あのね、死喰い人全員で盛大にパーティー、なんてしなくていいの。二人だけで静かにパーティーがしたいだけ。」

「何故?」

問えば眉をハの字にして

「だって…去年も一昨年もヴォルの仕事が忙しくてパーティー出来なかったから。」

そう言われ、去年の今頃を思い出す。
あの日もいつも通りマグル狩りに行っていて、確か帰ってきたのが深夜―…いや明け方だった。
その時ドロシーはベッドではなくソファに座っていて、片手に本を持ちながら眠っていた。
(俺様が来るのをずっと待っていたのだろう。)
思えばドロシーと過ごす時間は意外と短い。
一日の大半をマグル狩りに費やし、酷い時では一言も会話せずに一日が終わる日だってある。
ドロシーには寂しい思いをさせてしまっているのだろう。

「…分かった。パーティーをしよう。」

言った途端、ドロシーの目が輝き、顔が綻んだ。






パーティー、というよりまるでただの休日のように時間を過ごした。
休日と違う所といえば少々豪華な料理とドロシーが作ったケーキくらいだ。(ケーキは少し歪だったが、味はまあまあ美味かった。)
もう夜の11時を回ろうとしている。
そこで俺様は気が付いた。プレゼントが無いということを。

「ドロシー、すまない。余りに急な事でクリスマスプレゼントを買っていないのだが…。」

きっとまたキーキー言われるのかと思い、覚悟していたがドロシーはきょとんとした顔をしていた。

「いいよ、プレゼントなんて。それにもう充分満足してるから。」

その言葉の意味が解らず、考えているとドロシーは俺様の手に自分のそれを乗せ

「こうやってヴォルとのんびり過ごせるだけで幸せなんだよ。」

恥ずかしそうに微笑みながら言うドロシーを見て自分の顔に血が上るのを感じた。

「ヴォル、顔すっごく赤いよ。…ふふ、可愛い。」

まるで小さな我が子に言うようにからかわれ、これ以上情けない顔を見せるまいとドロシーを抱きしめ、赤面した顔を見られないようにした。
抱きしめた瞬間、驚いたのか少し身体を強張らせたが、抱きしめた真意が解ったのか耳元でくすくす笑っていた。

「ねぇ、ヴォル。盛大なパーティーがしたいとかクリスマスプレゼント買ってとかそんな我が儘言わないから…だからクリスマスの日だけは一緒に居る時間をいつもより長くして欲しいの。」

お願い、と言われれば断れる訳がなくあぁ、と短く返答した。

「本当に?…約束よ?」
「あぁ…約束な。」

またふふ、と笑い、俺様を抱きしめる力が強くなった。

「ヴォルって本当に低体温だよね。」

悪態をつきながらもその声は弾んでいる。
柔らかく、暖かいドロシーの温もりを全身に感じていた。(時計を見れば午前0時を回っていた。)







今日はクリスマス。
時計の針は午後7時を差している。
周りに人は居なく、ちらりと後ろを見れば積もった新雪には自分の足跡しかない。
またぽたぽたと綿のような雪が舞い降りる中、宵闇を見上げた。


「傍に居るって約束したのに、 嘘吐き。」






盛大なパーティーもクリスマスプレゼントも要らない。
貴方の傍に居るだけで幸せだった。
なのに。

どうして死んでしまったの?ヴォルデモート





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