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#トマトワンライ

【ほどく】


それらしいムードを作るのも壊すのも大概決まってきみの手で、その器用なのか不器用なのかよくわからない手つきは軽率にぼくを苛立たせる。
「あ、わりぃ。締まっちまった」
息苦しいのは性急に深く潜り込んできた舌とおもむろに絞められた首元のせい。肩で息をするぼくを放って、眉間にうっすらと皺を浮かべる至近距離のきみの眼はぼくではなくぼくの装飾物へ対峙して、たらたらと節の目立つ男らしい指を懸命に動かす。
「…あれ、どっち引っ張んだ、これ」
だんだん小さな子どものままごとを見守っているような気分になってきて、埒があかないと溜め息を吐くと、察したきみは素直に困った顔をした。
「なあ、これ、退けてくれよ」
何故毎度毎度こんなタイミングで自ら猛獣を呼び込む真似などしなくてはならないのか、腑に落ちない。しかし心の何処かで、不器用なきみの一面を見ることが出来てほっとしたのも事実だし、何よりこのまま互いに固まったままで居るのも馬鹿らしい。ぼくは観念して、きみを困らせるそれをするりとほどいた。その瞬間、眉間の皺が跡形も無く消えて、ああまたしてやられた、と再開されたキスの最中にぼくは思うのだった。














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