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再び



「なんでだよ!いいじゃねえか、俺が来いっつってんだから来い!」
かれこれこの押し問答を何分間聞き続けているだろう。業務も連絡もそっちのけで、来い、行かない、の往来を傍で彼らの相棒たちがオロオロしながら見守っている。
「僕が行く必要は無い。家族水いらずでゆっくりすればいいだろう」
「いいじゃねえかよ、お前も家族みたいなもんなんだし。なんなら淑乃やナナミも呼ぶか?」
「尚更行かないね。そっちこそ、また改めて日を取り持とうと言っているのに何故聞かない」
「今日がいいんだよ、つか、今日じゃなきゃやだ」
途中、物凄いとばっちりが飛んできた気がしたけれど、聞かなかったことにしようと思う。生憎ナナミは居合わせていなくて、あたしは心の底から非番の彼女を羨ましいと感じる。いやよ、あたし今日は毎週楽しみにしてるドラマがあるんだから、絶対行かない。ていうかドラマが無くても死んでも行かない。
「自分の誕生日を祝いに来いとは、きみも図々しい奴だな」
「っ、そんなんじゃねえよ、けど…とにかく、来てくれよ。頼むから」
「なんかヤな予感」凄まじい危機探知能力を持つララモンの言葉に、同感。人と人の喧嘩ってものには、聞くべきものと聞かざるべきものと聞いてもどうでもいいものと三種類あって、今回のこれは間違いなく三番目。
「淑乃。このオチ、当ててあげる」
ララモンがこっそりと耳打ちしてくるのをおざなりに振り払った。
「いらないわよ。それより早く帰りたいの。あの二人、もう少し喧嘩してるなら隊長への引き継ぎよろしくしてもいいかしら」
「それ、淑乃が怒られるだけよ」
「わかってるわよ!言いたかっただけ」
言いたかっただけ、言いたいだけ、彼らはとりあえず喧嘩をしたいだけ。(それも無自覚に)なんだって足掛け七年もこんなしょうもない痴話喧嘩を傍で聞かされなきゃなんないの、馬鹿みたい。あ、痴話喧嘩って言っちゃった。認めちゃった。悟らないようにしてたのに。
「家族に紹介してえんだよ、ちゃんとした意味で!」
「だからそれが嫌だと言っているんだ、今更過ぎる!」
悟らないようにしてたんですけど!!重い腰を上げて、七年越しの眩暈を振り払って、自分より数段背の高い二人の肩を押しやって、ドアの向こうに突き飛ばして、叫ぶように言い放ってドアを閉めた。

「大誕生日おめでとう!二人ともどうぞ末永くおしあわせに!!」




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