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免罪の代わりに、有する全ての情報及び自分自身の体を“素材”としてDATSへ提供する。そんな約定を交わして三月ほど過ぎた頃、お気に入りの丈の短いワンピース1枚とヒールの高いサンダルでいつもの場所へ出向くとトーマはかんかんに怒った。金髪と蒼い瞳を持つ彼は時々、欧米じみた嫌味臭い言い回しで、日本古来の頑固親父のような小言を言う。「淑乃だって、制服の丈は短いわ」「きみのそれはどこもかしこも晒し過ぎて眼に毒だ。そもそも制服ですらない」反論は綺麗な形をした口に吸い込まれる。私はむうと唇を尖らせて見せるけれど、その様をもう蒼い瞳は捕らえていない。
「まあまあ。動きやすくていいんじゃねーの?」
数年前対峙した時よりも幾分低くなった声が、呑気な言い草で仲裁に入る。私の無言の反論は素知らぬフリをしたくせに、「そういう問題じゃない!」突っかかる当の本人はほんのり顔を赤らめて、その実態は頑固親父なのか幼気で純粋な青少年なのか、それとももっと奥ゆかしい何かであるのか、掴めない。(だって相手が相手ですもの、)ただひとつ、彼を翻弄すること自体は出来なくとも、翻弄のきっかけを自分の手で作り出すことは容易に可能である。これが真実である。
「賑やかで良いですわね、此処は」
「…そお?毎日ぎゃーぎゃーうるさくて、ウンザリよ」
そう微笑む淑乃の隣で、肌を少しでも隠すべく薄いカーディガンを羽織った。


















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