小説 | ナノ




こんな不様な姿できみに愛されたかったわけじゃないのにどうして人は愛を確かめ合うのに服を脱がなきゃならない?愛撫と結合は即ち羞恥と痛みで、こんなもので愛を真剣に説くなんて頭がおかしい、まったくどうかしている。けれどきみは至極真面目に「やりたい。」そう言った。それはもう狂おしいほどの繊細且つ直球の欲情。投げ掛けられることそのものには何故か抵抗は無かった。が、受け止める瞬間、やっとその痛みを理解した。本当は理解なんてしたくなかった。わからないまま体だけ勝手に鳴いていれば良かった、のに。きみの眼は魔法を解く鍵のようだ恍惚の海に溺れたがるぼくを執拗に掬い上げて金縛りにして離さないだからぼくは溺死することも赦されぬまま水面の際で浅い呼吸を繰り返すばかり。こんな不様な姿できみに溺れたかったわけじゃない、のに、どうして人は苦しみを痛みを悦びを安らかな顔で迎え入れることが出来ない?「俺のもんにしたい、だから、したい。」そう言ったきみを見上げるぼくの顔をきみはどんな顔で見ていたのかぼくはもう。したい。口の中で反芻しながらああ遂に始まってしまうのだと思った、辱めが惨めさが痛みが、あまりに強いきみの腕に圧し折られる尊い何かが。ぐしゃぐしゃに潰れてしかし無くならない。こんな不様な姿できみを愛するということ、愛したいと言うきみと、ぼくはまだ上手く向き合えずに居るわけだけれどきみはこの透明な錠を外して何度も何度も扉を開く、なんどもなんども。その綺麗な手で汚いものを拾わないで何も生み出さない場所に触れないでその綺麗な声でこの汚さを肯定しないで、おねがいだから。「好きだよ。」いつまでも綺麗なきみで不様なぼくに愛を施そうとしないで。溺れたい溺れたいもう眼を閉じさせてほんとうは不様なぼくに気付かないフリをしていつまでもきみに愛されて居たいのに溺れたい溺れたいもう眼を耳を肌を愛を。














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