小説 | ナノ




その夜は小学校の同窓会があった。
二次会まで参加して、ぐでぐでに酔っ払って、ヤマトに抱えられて帰ってきた、ヤマトの部屋に。
風に当たりたいと駄々をこねたらベランダに転がされた。ぐるぐるする視界の片隅で、俺の隣に腰を下ろして、ヤマトは缶ビールの蓋を開ける。(つえーな、相変わらず。)ぷしゅ、って破裂するような音が響いた瞬間、漸く生暖かい風を感じた。すぐ傍の柔らかくない太腿に猫みたいに摺りついたら「なんだよ、」とぶっきらぼうに言いながらヤマトは俺の髪を梳いた。これがカレシリョクってやつか、と思った。笑えた。

「なあーヤマト」
「ん」
「一生のおねがい。ずっと傍に、居てくれよ」

デジタルワールドの風は今思うと心地良かったんだ。何もかもが異質な世界だったのに、俺達は死物狂いで、歩いて、食べて、夜は眠った。ありのままの俺達を生かした世界。ありのままで居た俺達。障害はたくさんあったけど、俺達の何もかもを否定されることは、無かった。たぶん。今になって、酒を飲み酒に呑まれた頭で、やっと思えるようになったこと。

「…当たり前だろ。寧ろこっちの台詞だ」

ヤマトは照れ臭そうに言った。真っ赤な耳が金髪の隙間から覗いてて、この光景、今までもたくさん見てきたなあ懐かしいなあなんてふやけた脳は記憶の中にその温もりを思い出す。

「空にもさ、こないだおんなじこと言ったんだよ、一生のおねがい。って」

澄んだ夜風の匂い。弱々しい星のひかり。この願いを、あの日の自分は一体どの星に託しただろうか。

「そしたらあいつ、お前とおんなじ返事したんだぜ。それはこっちの台詞よ、って、そんで、笑ったんだ」

そう言ったらヤマトも笑った。
言葉と呼吸は生きるすべとして、あの世界でもこの街でもゆるされたもの。ならば願うことは、同じようにゆるされるだろうか。もう少し風を、感じて居たくて目を閉じると星は見えなくなった。縋り付いた体温はいつまでも俺を否定せず黙ってただそこに在る。(一生のおねがい だから 一生かけて叶えあおうね)














人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -