むせ返る口内に広がるのは無色の味でした。

鉄臭くて苦い血でももれ出た二酸化炭素でもありません。味がしない。生きている味すらしないのです。抑えた指の隙間から漏れ出るのは咲くはずのない想いばかりです。

貴方の姿を見るたびに私の胸に希望の花が咲き乱れます。今日こそは今日こそは。そんな未来への穏やかさが咲き誇ります。

でもそれは本当に一瞬の出来事で、貴方の隣に現れる美しい少女の姿に一気に萎んでしまいます。威勢よく扉をあけた蕾がとろけていきます。

その代わりに緑色の蕾が芽吹くのです。貴方の腕に絡みつく少女の細い腕への負の感情が蕾に栄養を注ぎ大きくしていく。やがて目を見開いた蕾は美しくも穢れなき花へと美貌をかえる。

私の勇気を糧にして花はひたすら咲き続ける。もうどれだけ咲いたのでしょう。小さく息をもらすたびに私の中に巣くう汚らしい感情ばかり目立つのです。

貴方が好きだと伝えられれば。希望の華のために生きていける。

それなのに私は今日も口を抑えて小さな息をもらすばかり。

華は種を撒き散らし髪に絡みついていく。いつか一面に緑色の花を咲かすときまで、この想いは実らず朽ち果てていくのでしょう。

私は希望を持ちえて今日も花を咲かせ、静かに瞳を閉じました。

瞼の裏に映るのは、貴方の優しい双眸です。きっと私に向けられると信じて穏やかに享受しまた今日も咳をこぼしました。




穏やか・貴方は希望を持ちえる

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