足取りが重い。今日は外出する予定はなかったのに、なぜか池袋に来ている。

(だって、これせっかく作ったしね。ドタチンにでもあげよう…)

ふと頭をかすめた金髪バーテン服を振り払って、ドタチンに連絡を取るべくケータイを取り出す。その時、いつもより若干カップル率の多いサンシャイン通りの向こうにたった今頭から消した金髪が人ごみよりぴょこんと飛び出ているのが視界に入った。


し…しずちゃん!!!!


わわわ、さっそく出くわすなんて最悪!こっちに背を向けているから気づいてないみたいだけど、見つかるのは時間の問題だよね。こんな日に会ってもきっといつもと変わらない。自販機が投げられて俺はナイフを突きつけて…簡単に予想ができたシズちゃんとの対面にさっきまでどきどきとうるさかった心臓が静まっていった。本当はすべてわかっている。自分がだれのためにチョコを作って、だれに渡すために池袋へやってきたか。認めたくないけど、準備万端な自分がひどく憎らしい。

  
あーもうどうしよう…


少し悩んで、一歩踏みだそうとした瞬間シズちゃんがだれかと話してるのに気づく。あれは、ロシア人の…元暗殺犯現在シズちゃんの後輩ポジションについてる女…が、シズちゃんにピンクのリボンのついた箱を手渡していた。
間違いなくバレンタインチョコレート、だよねアレ。ちょっと照れながらもシズちゃんは受け取ってお礼の言葉を言っている。


――――――――ズキンッ

なんなのこれ。心臓がイタイ。見たくなかったあんな場面。……あんな……顔!
池袋なんか来るんじゃなかった…今すぐ帰ろうっ。そう踵を返したとたんいつもの低いどすをきかせた声が聞こえてきた。

「いーざーやー。手前性懲りもなくまた池袋来やがって!!今日という今日は殺す!!」

顔合わせたくなかったのに、気づかれたらしい。もうホント死んでよシズちゃん。先程貰っていたチョコレートの箱を持ちながら、ずんずん歩いてきた。

「何?もう帰るところだから気にしないで ってか、シズちゃんも人並みにバレンタインの日にチョコ貰えるんだね。おめでとうw高校の時なんて、三年間そういうのとは無縁だったもんね」

いつもの調子でいつものようなセリフを吐く。至極めんどくさい。帰りたいんだよっ!

「ああ?バレンタインとか別に興味ねぇし…これはヴァローナが日本だと義理と人情は欠かしちゃいけねーって勉強したとかなんとか言って俺とトムさんにくれたんだよ」

「へー義理ねぇ。でも、シズちゃんにとっては初めて女の子からもらったチョコじゃない?今日は記念すべき日だね!」

そう茶化しているとシズちゃんの視線が俺の手元でとまった。コートのポケットに手を突っ込んで腕には例の紙袋がかかっている。

「手前だって、貰ってんじゃねーかぁ?臨也くんよぉ手前にやるなんてよっぽどの物好きだろうなぁ」

は?俺が手に持っている紙袋を貰い物だと勘違いしたらしい。まぁ、そう思うよね普通。まさか、俺が、シズちゃんに、なんてっっっ


ポイっ



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