■津サイ+臨





広いリビングの真ん中で着物に金髪といった一風変わった出で立ちの青年がぽつんと立っている。彼はただ青ざめた表情で微かに震える自身の手を呆然と眺めていた。

(ああ)

(サイケ……ごめんごめん……)

しきりに心の中で謝る彼の足元には、白いファーコートにピンクのコードがついたヘッドフォンをした青年がうつ伏せに倒れていた。


(だって)


(だって……、)


(サイケが静雄のこと好きだなんて言うから……)


(”シズちゃんのこと大好きなんだ”って、)


(俺に向かって微笑むから――)


つう、と津軽の瞳から涙がこぼれた。
カッとなってサイケに自分がしてしまったことを悔やんでも、今さら時間は戻せない。
どうして感情を抑えることが出来なかったのかと、短絡的な自分に腹が立つが、サイケの好きという感情のベクトルが、自分以外の人間に向けられるなんて元より耐えられるはずがなかった。
津軽が後悔とショックで自分の手のひらに視線を向けていると、ガチャリと音がしてこの家の主である臨也がリビングへ入ってきた。

「?津軽どうしたの?何ぼうっと立って―――ッサイケッッ!!?」

臨也はフローリングの上に横たわるサイケの姿を視界に捉えると、慌てて近づいた。
瞬時に抱きかかえると、顔を上に向け、乱れた前髪を掻き分けて呼びかける。

「サイケ!?サイケ!!ちょっと……サイケってば!!」

体を少し揺すれば、微かに呼吸しているのがわかった。なおも呼び続けていると、やがて閉じていた瞼が、ゆっくりと開かれた。目じりには涙の跡が見て取れた。

「い……ざ……や……くん?つがる……が……つがる……が………!」

息も絶え絶えにサイケは何かを訴えかけるように臨也にしがみつく。

「サイケ落ち着いて……!津軽が何したの?」

「……つがるがね……サイケに……











くすぐったいの刑したの!!」





「―――――…は?」

臨也はサイケの口から発せられた言葉の意味が理解できなくて、ピシャリと固まった。
そんな臨也を差し置いて、津軽がサイケに向き直り責め立てる。

「だって、サイケが静雄のこと好きだなんて言うから!!」

「そうだよ。俺シズちゃん大好きだもん!」

「……っっ!」

「でもね津軽……」

再び紡がれた言葉に津軽がショックを受けていると、サイケはむくりと起き上がり、臨也の腕の中から抜け出すと、津軽の目の前まで移動した。自分より10センチほど高い津軽の顔を見つめるとにこっと微笑んだ。

「俺、津軽のことは愛してるよ!!」

「え?」

「もう津軽ってば早とちりさんなんだからーー!!俺は臨也君やシズちゃんやみんなのことは大好き!……でも、愛してるのは津軽だけ、だよ?」

そう言って、サイケは首を傾げる。自分に向けられた最上級の愛の言葉を津軽はゆっくりと頭の中で咀嚼した。

「サイケ……そうだったのか。お前が静雄のこと大好きなんて、あんなかわいい顔して言うからついカッとなって……ひどいことしてごめん……くすぐりの刑、苦しかったよな?」

「ほんとすっごい息できなくて苦しかった!!津軽はサイケの弱い部分全部しってるんだから、もうくすぐっちゃだめ!!」

サイケは、ぷうっと頬を膨らませて津軽の顔を覗き込む。腰に手を当てたその姿は、言動もあいまってとてもかわいらしいものだった。津軽はたまらなくなって、自分より小さくて愛しい存在を強く抱きしめた。

「ん。もうしない。俺もサイケのこと愛してるから……」

サイケの耳元で囁いて、いっそう抱き締めている腕に力を込める。

「津軽!!うれしいっっ!!俺も愛してる!!」

満面の笑みで津軽からの抱擁にぎゅうっとサイケも応えると二人はむっちゅ!と熱くて甘いキスを交わした。











え……


何この展開。


俺の存在まる無視?


っていうか、



最初のシリアスどこいった!?



BY 臨也心の叫び




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シリアスはこっち




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