鈍く輝くツバサで君を攫うよ



いつまで地に這いつくばっているつもりだ。
お前がその白い翼でもって羽ばたかないのはなぜだ。
星屑を冠するカードを持ち、デュエルキングの称号を持ちながらも、遊星という人間はひどくちっぽけで淋しげに見えるときがある。
例えば、ジャンク山で一人作業をする姿。例えば、かつて宿敵が消えた海を見つめる姿。
例えば、今こうしてそれぞれの道を歩まんとするチームを見つめる姿。
その選択は、ひどく遊星らしいと思う。その背中に生える確かな温度を持った翼を折り畳んで、彼はいつか自分たちの帰る場所にそのたおやかな両手を広げて待っているのだ。その翼をもってすれば、ジャックのように世界へ飛び立つことすらたやすいというのに。
かつてサテライトで育ったとは思えない程に美しい光を帯びた羽は、この自分たちの作り上げた街で汚されることなく保たれてゆくのだ。それがとても喜ばしく、また勿体ないとすら思うのだ。


「じゃあ、そろそろお別れだな」
「ああ」
「遊星は、ここに留まるんだろ?」
「…臆病だと、思うか」


遊星は留まることを『臆病』だといった。「違ぇよ」と苦笑する。遊星が、こうやって待っていてくれるからこそ、自分たちの思うままの道を進んで行けるのだ。『臆病』は寧ろ自分だった。


「遊星」
「…なんだ?」


その『臆病』を騙して閉じ込めたまま、今は進むから。
遊星の滑らかな頬に武骨な指を滑らせる。くすぐったそうに身をよじる遊星は、あどけなさを残した愛しい存在だった。


「いつか、お前が優しさを欲しがった時には」
「クロウ…?」


純粋を磨き上げた瞳がこちらを覗く。優しさに温められた瞳はいつまでもその輝きを失わないだろう。だがいつか。
お前の優しさに甘える臆病な自分にさよならを告げ、いつかお前が優しさに飢えたら。


「ク、ロ…」
「汚れちまった翼なんて構わずに、お前を攫いに行くから」


見開かれた純粋を閉じ込めて、始まりと終わりの場所へ連れていくから。
しばしの別れに、そっと唇を落とした。



end

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クロウさん、とんでもない電波である。
BGMは天/野/月/子さんの『烏』。
すごくクロウソングな上に、個人的(フィルター付)クロ遊ソングです。神曲、おすすめです!



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