つまさき べつに弟になりたかったわけじゃないが、これは不平等だと思う。 低い声で唸りながら燐は雪男の頭を睨みつけていた。 二人は久しぶりに予定が合って外出をしていたのだが、生憎の雨模様。傘を持ってきていたので派手に雨に濡れることはないのだが、やっぱり傘を持つのは雪男の役目。雪男の方が背が高いのだから当たり前である。燐にはそれが堪らなく不満だった。 「…しょうがないじゃないか。こうした方が都合がいいんだから」 「…う」 真っ正面から正論で対抗されると何も言えなくなる。 べつに雪男に怒っているわけではない。ただこうされると、仮にも兄である事に対しての面目が立たないというか、なんというか。 うまく言葉にできなくて口ごもっていると、頭上から少しだけ笑う声。隣だと顔が見えない。燐の目の高さには雪男の声の度に動く彼の喉仏。 「僕はそれに不満はないんだけどな」 「お前はないだろうな!」 「兄さんにはこのままでいてほしいな。そっちの方がかわいい」 「か、かわ…っ!?」 心外な言葉を言われた気がするが、裏腹に心拍数と体温は上昇するばかりで、自分でも混乱して訳がわからなくなってきている。 「おま…バカかっ!」 「そんなことないよ。兄さんはかわいい」 「…っな…!」 そんな口説き文句は女の子に言えよな! 苦し紛れに絞り出した声は迫力に欠け、またそれも燐の羞恥を煽る要因になったが、雪男は逆に真摯な表情で詰め寄り、燐を真っすぐに見る。 「あ…」 その瞳は僅かに欲に濡れていた。しっとりと濡れた睫毛から見え隠れする瞳に映るものを、本能的に燐は察知してしまった。 目を少し力を入れて閉じる。少しした後、額に柔らかい感触。燐の額より上から落とされるこの感触に、やはりなんともいえない気分になって、もう少し差を縮めたくて、少しだけ背伸びをした。 それを雪男は燐が強請っているように見えたらしい。機嫌良さそうに目を細めながら、もう一度「かわいい」と言って、何度もそこに唇を落とした。 「好きだよ、兄さん」 「………あほ」 顔が茹蛸のようだった。今の顔を見られるとまた兄の面目が丸つぶれなので、雪男の首にしがみついて顔を隠す。身長差が悔しかったので、また燐は背伸びした。 end. :::::::::::: BGM…チ/ャ/ッ/ト/モ/ン/チ/ー 「ツマサキ」 身長気にしてる燐かわいいです。 甘い双子はもっとかわいいです。 |