甘やかな麻酔


視界に広がる青にこのまま溺れられたらいいのに。
甘受する唇は深く刺すように全身を刺激し、たちまち全ての筋肉が弛緩するようである。


「んぅう、…っふ、ぁ」
「…っふ」


呼吸を許さない激しいそれは身体に依存する感覚を融解させる。なにも考えられなくなるのが恐怖であり、しかしそれを確かに望んでいる自分がいた。
相手の零す吐息ごと唇で貪る。もう視覚は朦朧として使い物にならない。唇が触れ合う感覚だけが、自分を現実に繋ぎ止める。
舌が絡み合い、歯列をなぞるぬるりとした感覚には確かに熱があった筈なのに、なにも温度を感じないのは自分の身体が熱を帯びているからだろうか。全身が脈打つ。今確かに二人は一つだった。


「っなんだ、こんな時に、っん、考えごとか?」
「っあ、んんン、んぅぅうっ」


この声が好きだ。
普段の余裕を持った声とは違う、どこか獣じみて明らかに欲を帯びた声を自分が出させていることにこれ以上なく気持ちが高ぶる。
相手の首に手を回してより深くまで繋がる。ゆらゆらと無意識に揺れる腰に、あいつが喉で笑う気配がした。


「は、ふ…スガタ…ぁ、…スガ、タ…!」
「…っタクト…!」


耳を互いに犯す水音と互いの名前を呼び合う声だけが響くこの部屋で、
溶け合って混ざり合ってひとつになれたらいいのに。


end.


あとがき
キスしてる話って無性に書きたくなります。
スガタクはいちゃいちゃが似合うね!


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