デイブレイク・ラバー タクトがスガタの家に下宿してから随分と時が経った。今や寮としての生活よりも圧倒的にこの日々によってタクトは充足を得ていた。 だが同時に気恥ずかしさを感じてしまうのは仕方のないことだとタクトは嘆息する。 タクトとスガタの両名が一線を越えた関係であることを知っているのは極僅かな人数である。彼らの理解ある行動で今まで同性であることに対して傷ついたことはない。だがそれでも日常生活における密着度は減ってしまうのは仕様である。それは仕方がないことだと二人とも思っている。 だがスガタの家に来て以来、二人はこれまでの空白を埋めるかのように互いを求めた。さながら渇きに苦しむ魚のように。 さて今はまだ朝早く目覚める鳥がやっと目を開ける夜明け。人はまだ眠りに着いている。事実シンドウ・スガタはまだ深いまどろみに落ちている。 そこでもぞ、と布団の動く気配がした。赤い髪がふわりと揺れる。 ツナシ・タクトは深く眠れずにいた。昨日の疲れが溜まっているはずなのに。 昨日の。そう思い出しただけでタクトは赤面する。 スガタは昨日タクトを離してはくれなかった。後ろから抱き込み、甘い声でタクトを翻弄し、もうなにも考えられないくらいに思考を溶けさせてしまったタクトは、結局思うがままスガタにさせられたわけで(何をされたかについてはタクトという一個人の矜持の為に割愛させていただくが)。 『タクト』 どれだけつんけんに突き放してもスガタが一言名前を囁くだけでもう抗えない。自分の甘さに苦笑が漏れた。 タクトはスガタの顔を見遣る。穏やかに眠っていても彼の顔はいつでも精悍である。そこに見惚れてしまう自分は病的なのだろうか。 スガタの白く、それでいて逞しい手に触れながら、今たしかにある幸福を噛み締める。 「ああ、」 「やっぱり好きだなあ」 泣きそうに笑って、タクトは彼の指先に唇を落とした。 end. あとがき 初スタドラ小説です! スガタクは公式ですよねニコッ← |