俺と同い年だなんて考えてもみなかった。すっかり当たり前になった一緒のお風呂タイム。一足先に湯船に入った俺は勘右衛門が体を洗う姿を見つめる。もう高校生くらいの体格だ。こんなに骨格が変わっていることを気にも留めていなかった。このままのスピードで成長を続けるとすると、あと一ヶ月も経てば年相応の見た目になる。複雑な心境だった。これまで勘右衛門は年下で、俺が守ってやらなきゃいけないか弱い存在だと思っていたが、同い年だと思うとどう接して良いのか。あまり過保護にしすぎるのは勘右衛門の尊厳を傷つけることになるんじゃないかとか。勘右衛門の健康を維持するための性欲処理も、相手が少年だという後ろめたさがなくなってしまうと、今まで見ないふりをしてきた自分の中の欲望が目を覚ましてしまいそうだ。いけね。俺は反応しそうになった股間をお湯の中できゅっと握った。

「何だよ、はちざえもん。さっきからそんなにじろじろ俺のこと見てぇ」
「えっ。べ、別に。お前を見てたっていうより、ちょっと考え事してただけだよ」
「えろいこと考えてたんじゃない?」
「んな訳あるか」

正直図星だったから焦る。勘右衛門はシャワーを止めて、濡れた髪を掻き上げる。そんな仕草に心なしか色気を感じてしまう。勘右衛門が湯船の縁に手を掛けて片足ずつお湯の中に足を入れた時、視界に入ったあそこがちょっと反応しかけてるのを見て可愛いと思ってしまった。いや、男の股間を見て可愛いっておかしいだろ。

「ふふ、はちざえもーん」

勘右衛門は俺の首に抱き着いてくる。お湯がザバーッと湯船の外へ流れ出した。密着したら半勃ちがバレる。俺は勘右衛門の腰を掴んでそれ以上近付けないようにした。

「こらっ。そんな動いたらお湯が全部なくなるだろうが」
「ちょっとくらいお湯が減ったって二人でくっついてたら温かいでしょ」

勘右衛門の手が俺の手を掴み、自分の胸に当てる。

「ね、ちょっとだけでいいから、摘まんで?」

甘えた目をするお前のことが可愛くて堪らないんだよ、俺は。

「仕方ねぇな……」

満更じゃない気持ちで、ふに、と優しく指先で乳首摘まむ。

「あ、それ。もっと、いっぱい……っ」

ふにふにふに、と何度も摘まむと乳首がすぐに硬くなって、それをこりこりと人差し指と親指の間で転がす。勘右衛門の体がびくんっと跳ねた。おしりに手を伸ばして尻尾の付け根を揉むと体をくねらせる。

「んぅっ、あっ…、あっ」
「えろい顔してるぞ」
「ぁんっ、だって今、えっちな気持ちだもんっ」

俺の気持ち、お前はわかってるのか。目の前でお前にそんな顔されたら、俺は。

「乳首、そんなに気持ち良いのか」
「気持ち良いよっ……はちざえもんも、してあげようか?」

天真爛漫に見えても、お前なりに頭の中で色々考えているのを知っている。俺のことを常に一心に考えてくれていることも。

「俺はいいって。乳首はそんなに感じない」
「毎日訓練すれば気持ち良くなれるよ」
「そこまでする気はない……」

乳首、めっちゃピンクでえろいなぁと考えていたら、勘右衛門が俺の目をじっと見詰めているのに気付いた。黙ってそうしてる時は大体キスしてほしいと思っているのを知ってる。最近、勘右衛門が何を望んでいるかわかるようになって来た。チュッと音を立ててキスしてやると嬉しそうにする。狸の耳を甘噛みするともどかしそうにますます俺に強くしがみつく。

「ぁんっ、ねぇ、もっとキスして……っ」
「欲しがりだな」
「んー、だってぇ……っ!んっ、んっ、はちざえもんっ、好きっ」

生まれてこの方モテた例のない俺がこんな可愛い少年にメロメロに惚れられてるって冷静に考えるとめちゃくちゃ照れるんだよな。まぁ、俺もこんなに一人の人間を好きになるの、初めてだからな。
……あれ、待て。俺、今、勘右衛門のこと。
ドッドッと、突然心臓の音が大きくなる。

「んぁ、うーっ、俺、俺、もう我慢できない……っ」

そんな可愛い顔で、俺のことを信じ切った目で、俺のことが全てだと語る目で俺を見るな。大事にしたいのに、滅茶苦茶にしたくなるだろうが。今まで気付いていなかった自分の本当の気持ちに気付いてしまった。そうか。そうなんだよな。俺は、もうとっくにこいつのことが。

「……俺も、もう我慢できないよ」
「はちざえもん?……えっ!な、何っ!?わっ!」

俺は勘右衛門を抱えて立ち上がった。うわ、すげぇ重くなってるじゃん、こいつ。最初はガリガリに痩せてあんなにちっぽけだったのに。この重みが嬉しくて愛しい。

「ど、どうしたの!?はちざえもん!?」

俺は風呂場のドアを足で押して開け、バスタオルだけ掴んでびしゃびしゃ水を撒き散らしながら洗面所を出る。

「え!何!?床濡れちゃうよ!うそっ、怒ってる?えっ、どうしてっ?俺、何か悪いことした?ごめんなさい!このまま玄関行くの?やだっ、お願いだからっ、締め出さないで!」

余裕がなくて返事をしないでいたら、勘右衛門はずっと一人で喋っている。反応が素直過ぎて可笑しくなった。それと同時にこんなに毎日一緒にいても、こいつはまだ俺に捨てられる不安を抱えているのだと気付かされて歯痒くなった。でも、そんな不安を抱えさせているのは他の誰でもない、俺だ。

「あれっ?どこ行くのっ?え?待って、何?本当にどうしちゃったのっ?何か喋れよぉっ!うわぁっ!」

勘右衛門の頭にバスタオルを被せてそのままベッドの上に乱暴に下ろした。

「これだけは覚えておけ。もうお前が離れたいと思っても俺は離してやる気はないからな」
「どういうこと?ちょ、ちょっと……!」

俺は勘右衛門の足首を掴んでガバッと開く。突然股を開かされて、普段大っぴらな勘右衛門も流石に慌てた様子で股間を隠そうとする。俺は勘右衛門の手を掴んでどかし、元気が良いそこをじっと見詰める。ピンクで小さかったちんちんはもう大人の形になっている。だけど、それを見て興奮する自分がいた。もう、生い立ちとか、見た目とか、男とかそういうの全部関係ない。俺は、

「お前が、好きだ」
「へ……、えっ、待って!あっ、そんなっ!あぁっ!」

俺は大人のペニスにしゃぶりついた。勘右衛門は暴れたが、俺は両方の太腿の付け根をしっかりと鷲掴んで足を閉じさせないようにする。勘右衛門みたいに上手くできないが、こいつを全力で可愛がってやりたかった。

「だめっ……、だめ、だよ……」

俺の拙いフェラチオにも素直に腰をひくつかせる勘右衛門は体の力が抜けた様子で力なく首を振る。

「どうして駄目なんだ?」

俺が、れろぉ……っと竿を舐め上げると「ひぃっ」と情けない声を出す。

「だって、出ちゃう……っ!」
「出しゃあいいだろ」
「じゃあ、はちざえもんに精液飲まれるの恥ずかしいから、飲まないって約束して……って、ちょっと!ねぇ!」

それを聞いて、俺は勘右衛門のペニスを根本まで口に含み、頭を高速で上下に動かした。じゅるじゅると音を立てて強く吸う。勘右衛門の手が俺の髪を掴む。口の中の竿がぴくぴく跳ねるのが愛しかった。

「ば、馬鹿っ!はちざえもんの馬鹿っ!きらいっ!あっ、お願いっ……も、無理だっ!あぁあ……っ!!」

勘右衛門の腰がベッドから浮く。勘右衛門が射精している間、全部出せよ、と腰骨を撫でる。俺は達成感に満ちて、全てをごくんと飲み込んだ。口の周りについた涎をティッシュで噴いている俺を見て、勘右衛門が勢いよく起き上がった。

「約束してって言ったのに!」
「約束するとは言ってない。それにお前のそういう可愛い顔が見たくてしたんだ」
「な、何だよ、それ……」

不満に思いながらも可愛いという言葉に反応して頬を染めている素直なところがいじらしいと思う。俺がベッドの上に乗って覆い被さると渋々仰向けに寝ながら、俺の顔をじろじろ探る様に見る。不安と期待と疑問がありありと読み取れる。

「今、はちざえもんが何考えてるか、俺、わかんない……」

こいつに遠回しな言い方は相応しくない。もう決して不安にさせない。こいつの全部を包み込んでやりたい。だから、全部ストレートな言葉で伝えよう。

「お前を抱きたいと思っている」

俺はギンギンに勃起したペニスを勘右衛門のペニスに押し付けた。勘右衛門の肩が、ひくっと動く。

「な……どうして、急に……」

驚いている。今まで散々誘われてもそれを全て押し返して来たんだから、当たり前だ。でも、もう覚悟はできた。

「お互いをずっと大切にし合える関係でいたい。お前の素直なところ、可愛いところ、俺のことを好きでいてくれるところ、全部好きだ。俺はこれから一生、お前のことが一番好きだ」

相当似合わないことを言っている自覚があったから、言っている間に、火が出そうなくらい顔が熱くなって、最後の方はまともに勘右衛門の顔が見れなかった。しかも、すぐに反応が返ってくるだろうと思っていたら勘右衛門は全くの無言で、俺は、あれ?と勘右衛門の顔を見た。こんなこと言ったら単細胞なこいつは盛って襲いかかってくるんじゃないかと身構えていたのに、勘右衛門は顔を真っ赤にして瞬きもせず、静かに泣いていた。俺はぎょっとして、勘右衛門の頭を撫でながら顔を覗き込む。

「お、おい、大丈夫か?どうしたんだ?」
「だっ、だって……、そんな嬉しいことっ、ひっ、自分が、言ってもらえるなんてっ……、考えたこと、なかった、からっ……んくっ」
「……そっか。これからは聞き飽きるほどいっぱい言ってやる」

俺は笑って勘右衛門を抱き締めた。勘右衛門は嬉しいと言って鼻水をずびずび啜りながら泣いた。見た目は成長しても、守ってやらなくちゃとか、可愛いなとか、抱く印象は初めて出会った時と変わらない。鼻水垂らし過ぎだろ、とティッシュを鼻に当てて嚼ませてやる。これから時間をかけて、こいつのことをもっともっと沢山喜ばせてやりたい。

「ちょっと落ち着いたか?」
「う、うん」

流石に体が冷えて来て、俺はコンセントにドライヤーを繋ぎ、勘右衛門の髪を乾かす。ドライヤーのスイッチを切る頃には勘右衛門もやっと泣き止んだ。自分の短い髪はもう殆ど乾いていたが、ベッドに座ったまま申し訳程度に温風を当てる。すると、勘右衛門がぴったりと体を寄せて来たので、俺はドライヤーを置いて勘右衛門の体を抱き寄せた。

「そろそろ寝るか」
「うん……て、はぁ!?寝るって、眠るってこと!?」

憤慨される理由がわからずに狼狽える。

「何でだ。だって、勘右衛門も泣いて疲れただろう?」
「さっき、俺のこと抱くって言ったくせに!」
「いや、確かに言ったけどさ。無理に今日しなくても明日でもいいじゃないか」
「無理じゃない!絶対その気にさせる!」
「お、おい!」

ベッドから降りて俺の足の間に跪いた勘右衛門はぴたりと止まった。俺のそこが臨戦態勢だったからだ。

「さっきからもうずっとその気ではあるんだけどな……はは……。っておい、勘右衛門!落ち着け!ん!」

ベッドに押し倒されて唇を塞がれ、俺は勘右衛門の肩を掴む。でも、勘右衛門にやめる気はなさそうだった。暫くお互いに唾液を交換し合いながら、体を弄り合う。

「ねぇ、はちざえもん」
「うん?」
「俺のこと、好き?」

そういう質問が口から出るということは俺が勘右衛門をずっと大切しようという固い決意をわかってもらえた証拠なんじゃないかと思う。

「大好きだよ。世界で一番、愛してる」

似合わない台詞を言う俺に、勘右衛門は笑って、俺たちは固く固く抱き締め合った。俺のところに迷い込んできた小動物は、やっと安心できる居場所を見つけられたみたいだ。



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