ねむけざまし


「っひ…ぅ!?」
「……」
目が覚めたら私は素っ裸で広々としたベッドにインゴさん(上司)と寝ていました。
インゴさんはコートが無いだけの仕事着だった。
モノクロのひろーーーいこのお部屋は恐らくインゴさんの寝室だと思われます…インゴさん起きません。


「お前は酒癖と言うか、脱ぎ癖せはどうにかした方が良いと思いマスね」
私は土下座をする勢いで深々と頭をベッドのシーツに押し付ける。
「ご迷惑おかけ致しまして誠に申し訳ありませんでした」
インゴさんを起こしたらまず無言で睨まれた。
寝起きが非常に悪いらしく、私の素っ裸な状況を見てもスルー。ベッドに腰掛け足を組み一服し終えるまで無言のままだった。
毛布にくるまり待っていた私にお前は…とやっと口を開いてくれたと思ったら酒癖云々より脱ぎ癖があることを指摘された。
昨日は友人と酒を飲んでいた記憶があった。
おそらく泥酔直前で正直あまり覚えていないが、飲んでいた店のあの場にインゴさんなんて居なかった、はず…
「何故こんなことに…」
「たまたま寄った店にお前がおりまして。酔ったお前がワタクシに執拗に付きまとい全く離さないのでそのうち力尽きるだろうとそのまま引きずって帰りましたら家までしがみついたままでおりました。玄関前に放置するのもワタクシが困りますので家へ入れましたところ…」
「うわあぁぁあ!もうこれ以上は結構ですっすみませんでしたっ!!」
「いい迷惑です」
「すみませんっ」
今の説明に脱ぎ癖なんて言われれば話は見える。
はあー…私は勝手に他人の家でなんてことを…
「まだ」
まだ、の言葉の後。吸ったタバコの煙と一緒にふぅため息を一つして、長い足を組み直したインゴさん。
「まだ何もしてはいませんから安心して下さい」
「はい。それは全く心配してないですから、インゴさんは気にしないで下さい」
「……」
グラマー美女を侍らせるのなんてきっと容易いに違いないインゴさんが私のこの日本人体系に何かしようってのが無理な話だ。
そんなことよりあのインゴさんの前でなんちゅう醜態を晒してくれたんだ酔った私は。
「トトリ」
「は…はい何か?」
インゴさんは初めて私の名前を呼んでくれました。お仕事中でもお前呼びでしたから。
ちょっとどきどきしました。
私をじっと見つめるインゴさん。
見とれてしまうほど顔もスタイルも良くてやっぱりカッコイイ。
けどインゴさんが私を見つめるのはダメだ。
「あの…、っ…インゴさん?」
私をそんなにまじまじ見ないで下さい。
目がさえてきたのかインゴさんは私をガン見している。
や、やめて粗が目立つ。いくら毛布で身体が隠れていても恥ずかしい。
そそられもしない酷い身体だとは自覚しておりますのでそんなに見てこないで下さい。
「あ!あの、すみませんすぐ服着ますね」
私はスーッ後へ滑りベッドを降りようとした。
が、床に足を付けた途端グッと腕を引っ張られて毛布ごとインゴさんの腕の中へ。
肌を合わせると一層タバコの香りが強くなって、自分の置かれている状況が一瞬分からなくなった。
「あ、あの!インゴさんこれは…」
その後のインゴさんの行動は早かった。
後ろから抱きしめられながら目の前で煙草の火が黒い携帯灰皿の中にサッと揉み消されました。
「眠気も覚めますし…まあたまには童顔幼児体系も良いものです」
恐る恐る見上げたらインゴさんの瞳はギラギラしていました。