エメットがお兄ちゃん




カラリと晴れた夏のある日
気持ちよい風を受け
丘の上にある大きな木の下で私はお気に入りの本を読んでいた。
紙の上で木漏れ日の光がゆらゆら揺れる。

すると
背もたれにしていた木の後ろからつんつんと何か肩に触れた。

「ん、 バチュル…?」

振り向けば直ぐ目の前にバチュルがいて、私の肩にのっかっていた。
私の読んでいた本の上まで飛び移り、紙の上で2回ほどくるりと這って、最後にきょとんとした顔をしてこちらを見上げてきた。

「か、かわいい…」

よくみると、色ちがい。
レモンイエローの柔らかい体毛、瞳はアメジストの宝石みたい。

(わあ綺麗な瞳。ほしいなあ…あ、でも驚かせたら逃げちゃうだろうなぁ)

しかも残念なことにボールを持ち合わせてなかった。
こんなに大人しく私の本の上にお行儀よくいるのに。
前からほしかった色違いのバチュル。どうにかしてゲットしたい。
だってこのバチュル、すごく…

「トトリ!」
「ひゃっ!…っエメット兄さん!?」

後ろから急に聞き慣れた人の声がして、パッと笑って現れたのは私のお兄ちゃん。

「(驚きすぎて変な声出ちゃった…)…あ!」

私は開きっぱなしだった本に視線を戻す。
さっきの声でバチュルが驚いて何処かへ逃げてしまった…と思いきや、

「ボクの妹、気に入ったかい?バチュル」

兄さんの頭の上にさっきのバチュルはのっかっていた。

「兄さんのバチュルだったんだ」
「最近生まれたばかりだよ」

バチュルは私に挨拶するように元気に兄さんの頭の上で鳴いた。
もう時間過ぎてるよ、インゴ待ってる。そう言って兄さんが私に手を伸ばす。私はその手をとって立ち上がった。

「そのバチュル、私ゲットしちゃう所だった」

残念。
苦笑いでそう言ったら、兄さんが更に笑顔になった。

「フフフ、このコはボクがキミへ贈るパートナーだよ」

バチュル。
そう兄さんが言うと、バチュルは鳴きながら私の頭の上に乗っかって、擦り寄るように甘えてきた。

「私に?い、いいの!?」
「もちろん。そのためにこのコ連れてきたんだから」

頬を撫でられ、兄さんの顔が近付いた。
紫色の瞳がとても綺麗。私よりさらに明るい金色の髪は木漏れ日の光できらきらしていた。
木陰で少し暗く、それがまた色っぽくてちょっとドキドキしてしまった。

「に、にいさ…」
「フフ…えいっ!」

更に追い打ちをかけるように思い切りぎゅう、とハグされる
エメット兄さんの香水の香りを間近で感じた。

「っ!お、おおお兄ちゃん!?」
「!」

いきなりのことで混乱した私は、わたわたと空を切るように両手を泳がせていると、兄さんは維持悪く更に抱きしめ逃がすまいとする。

「もうトトリ…かわいい。Cute!」

対格差でちぐはぐの抱き合いをしているので兄さんの表情は見えないが何となく嬉しそうな笑顔が想像できた。
そのままお姫様だっこをされて丘を勢いよく駆ける兄さん。
バチュルが私の服の上で必死にくっついている。かわいい。

「時間結構過ぎちゃったね…インゴ兄さん怒るかな?」
「大丈夫。インゴお兄ちゃんごめんなさいって言ったら血を吐いて許してくれるよ」
「えっ、と…血?」

―――――
トトリちゃんは金色の髪の毛に碧い瞳
双子はトトリより明るい金髪で紫の瞳
と、今回は外見をバチュルで考えてみました
望まれて生まれきた子ではないトトリちゃんは双子に強い憧れとコンプレックスを抱いています
バチュル色違いがほしかったのもこのため

エメット君はギリ過保護な兄さんですほんとギリ
インゴはシスコン拗らせてます
今回はトトリがテンパって昔から呼びなれている『お兄ちゃん』と呼んでしまいました
二人とも昔のようにお兄ちゃんと呼んでほしいみたいです