こくはく
静かな午後、
そして甘いひととき。
「……」
「…何だ、貴様」
「ぬぁっ、失礼したっ!某は…」
「真田幸村が何故ここにいる」
名前を聞いたわけではないと、思いながら相手の言葉を遮る。
無駄話ほど嫌いなものはない。自分が不快になるだけだからだ。
しかし、そんな思いなど通じないで真田は言葉を続ける。
「今日はサッカー部がないでござるよ。毛利殿も?」
「……あぁ、ない」
やや面倒になりながらも答えている自分もどうかと思う。
今日は試験とかなんやらで音を出してはいけないらしく、吹奏楽部もその対象になったのだ。
だから、久しぶりの午後を静かに過ごそうとしたら…この人物が現れた。
普段なら保護者同然の者がいるはずなのに今日に限っていないから、その苛立ちは上がっていく。
「……」
「…だから、何だ」
「長宗我部殿とは一緒にいないのでござらんか?」
何故その人物の名前が出るのか、と言いながら少し呆れてしまう。
だが真田はきょとんとした表情をしながら「いつも仲がいいではないか」と続けるものだから、それに反抗するように今までよりも大きめの声で話す。
「っな、あんな奴と一緒にするな!」
「でも仲はいいのでござろう?」
「…普通だ、普通」
その言葉に違和感を覚えながらも返事をする。
普段ならたいてい自分に関係ない、興味のない話題など無視することが多かった。
なのに今回は違う。どうしてここまでしゃべっているのだろうか。
「……」
「…なぁ、真田」
「な、なんでござるか?」
「いい加減言えばよかろう、お前の気持ちを」
先程からずっと気になっていること。
そろそろはっきりしてほしいと思ったので自分から言ってみる。
すると真田は少し慌てた様子を見せるものだから、少し面白いと思いにやりとする。
だから少し悪戯をしようと、言葉を続ける。
「貴様の気持ちなどとうに気づいている。言ったほうが楽にはならんか?」
「そ、それは…」
「我はそこまで待たぬぞ」
そう言えば真田はずっと塞いでいた口を開ける。
そして、遠慮がちに話し始める。
「……某は、貴殿の団子に興味がある」
やっと言った言葉に満足して、皿の上にある団子の串を一つ掴んで食べる。
その様子を先程から何回も見られていたので、食べたくても食べれなかったのだ。
そして、小さな団子を一つ食べてから喋る。
「…いいだろう」
その代わり、次は貴様が我に奢る番ぞと付け加える。
普段なら絶対にあげないであろう。自分のものを奪われるのは嫌いだから。
だけれど、今回は違う。こう少しだけれど話しているうちに何かを許してしまったらしい。
「本当でござるか!?じゃあ今度佐助の…」
こう機会があれば話題も増える。
話す機会も増える。
相手のことがよく知れる。
これほど、上手い団子が食べられるだろうか。
この相手なら、話していても飽きないなんて思っている自分はなんだろう。
Fin.
11.08/24
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