最初は、ソニアさんと楽しそうに話す田中に嫉妬してるんだと思っていた。
そうではないと気づいたのは田中がソニアさんではなく自分に話しかけてきた時だった。

しかし、田中に好かれているソニアさんに嫉妬してるのかと言われればそうではなく。

この気持ちは何なのかとしばらく悶々としていたが、ある時気づいた。

自分が、ソニアさんと田中の両方を好きになっていたのだということに。

(気づいたところでどうすりゃいいんだよ…)

左右田はそう思いながら砂浜で一人たそがれていた。
本当はソニアさんと田中の二人に一緒に過ごさないかと誘われていたのだが体調が優れないと言い、逃げてきた。


ソウルフレンドである日向に自分のこの気持ちをどうすればいいのかを相談することも考えたが日向は日向で七海と狛枝の二人に懐かれていてとてもではないが相談できる雰囲気ではない。

「はぁ…とりあえずしばらくはソニアさんと田中から距離取るしかねえよな…」


今日幾度目かわからない溜息をこぼし、項垂れる。
いつまでもここにいたらソニアと田中に見つかるかもしれない。そう思った左右田はコテージに帰るため立ち上がった。

「あら、左右田さん?」

立ち上がった瞬間ソニアに見つかった。
やべえ、と冷や汗をかきながらどう言い訳するかを考える。

「そ、ソニアさん…」

「体調は良くなられたのですか?」

ならよかったです。と微笑む彼女に罪悪感が芽生える。

「む、雑種…アストラルレベルは元に戻ったのか?」

さらにそこへ田中まで来てしまい完全に逃げれなくなった。

「お身体の調子が良くなられたのでしたら今から一緒にお散歩いたしませんか?」

「フッ、それもよかろう…」

どうしようどうしようと頭の中でひとりノンストップ議論をしていたら三人で散歩する流れになってしまった。

「…では左右田さん、田中さん参りましょう」

笑顔で手を差し出してくれるソニアを見て

(…まあ、答え出すのはもうちょい後でもいいか…)

どうしようもなくなるまではこの気持ちに嘘をつこう。と決めてしまった左右田はいつも通りの笑顔を浮かべてソニアの手を取るのであった。


『膨れた想いの行方は何処へ』
(今はまだ、居場所はないけれど)