貫いてきた銀色が鈍く光る。

-最後の記憶は、それだった。
ここはどこなのか、自分は死んだはずじゃなかったのか。
確かに死んだはずだ。
最期、愛しい人を守り切れたことに喜びを感じながら。

『…だから早くよぉ…』

唐突に、聞こえてきたその声は自分の愛しい人のものだった。守りたいと、そばにいたいと、思わせてくれた人のものだった。

「…ぼ、っちゃん?」

喉から出たものはひどくしわがれていて、
それでも、彼に届くように、呼びつづける。

「ぼっちゃん、ぼっちゃん…ぼっちゃん!」

呼びつづけていたら何かに引かれる感覚がした。
それに逆らわず、引かれるままに移動する。
途中から閉じていた目をそっと開けると、

そこにいたのは、最期の瞬間、じぶんのそばにいてくれた九頭竜冬彦だった。

「ペコ…おめぇ起きたんだな…!」

九頭竜に力強く抱きしめられ、あの絶望的なゲームの世界から目覚めた少女、辺古山ペコはそっと微笑んだ。
しばらく使っていなかった表情筋がうまく動いたかは分からないけれど。

九頭竜の背中にそっと手を回す。
色々と説明して貰わなければならないことはあるけれど、
そんなことよりも先に、この暖かさを感じることのほうが大切だった。


『おかえり』
(相変わらず泣き虫な彼を見て、思わず苦笑した)