気まぐれだったのだ。
いつも自分のせいでつらい思いをしているのかもしれない憧れの王女様に今日は自由に過ごしてもらおう。とか思ったから後輩の誘いにのっただけなのに。

(どうしてこうなった…)

そんな感想しか出てこない。
自分の目の前には二枚の紙きれ。
超高校級の王女であり自分の憧れの王女、ソニアが両手で差し出しているのは自分が見たいと思っていたアクション映画のチケットで

対して超高校級の飼育委員であり自分のライバル的存在の田中が上半身を90度に曲げ差し出しているのは今まで行ったことのない動物園のチケット。

どうやらどっちかひとつを選べということらしい。

明後日の方向を見つめながら左右田は少し前のことを思い出していた。

後輩である桑田と葉隠に遊べ遊べとせがまれて遊びに行った帰り、教室に忘れ物をしているのを思い出して忘れ物をとりに教室に入った瞬間、

「おまちなさい!」

「動くな!」

と、ソニアと田中に同時に言われ、え、なに、俺なんかしましたか。とソニアに聞こうと思った瞬間、
自分の目の前にバッという効果音がつきそうな勢いでその二枚のチケットが差し出されたのであった。

という回想を終えた左右田は、改めて二人の方へ向き直り、問いかける。

「…どうしろと」

「簡単なお話です。わたくしと遊びに行くか、田中さんと遊びに行くかを決めてもらうだけです。」

あぁ、なるほど。と納得し選ぼうとしたら付け加えてこんなことを言われた。

「ちなみに、私を選んだらわたくしの部下になっていただきます。」

「…え、あの、冗談ですよね?」

「冗談などではない。俺様の支配下に下るか、闇の聖母の下僕となるか選ぶがいい。」

「いや選べねえよ?!」

田中の説明に即座にツッコミを入れる。

「つーか本人がいないとこでそんなこと決めるか普通?!」

「決まったものは仕方なかろう」

「仕方なくねーよ!」

ドヤ顔する田中をぶん殴りたい衝動に駆られるがそんな度胸はないので結局怒鳴りつけるだけである。

「お話は終わりましたね?さあ左右田さん!お選びください!もちろんわたくしですよね!」

「フハハハハ!大人しく我が支配下に入ってくるがいい!」

二人揃って自分が選ばれる自信に満ち溢れている。
そんな二人を見ながら肩を震わせていた左右田は、

「お、俺、俺、…選べねえよオオオオオオオオ!」

逃げ出した。

「左右田さん何故お逃げになるのですか?!」

「待て左右田!貴様この俺様の結界から逃げられると思っているのか?!」

逃げ出した左右田を追いかける二人。
夜時間のアナウンスが流れるまで終らない様子のかけっこの結果は左右田の根性勝ちでおわるのであった。

『メカ☆メカ大パニック!』
(諦めてくださいよソニアさぁぁぁぁん!…田中てめえもだ!)