創作30 | ナノ




*グロいです




噎せ返るような血の香り、口の中に広がる鉄の味が心地良いと思ったのは、音を立ててそれを嚥下してからだった。歯を立てた首筋から血を啜り、抵抗してうるさかった腕が動かなくなった事に気を良くして離してやる。すると、待っていたとばかりにこちらの首に腕が回り、その愛らしさに思わず唇が弧を描いた。

「それで俺が死ぬとでも思ってるのか?なぁ、いーざーやぁ?」

締められている首をそのままにして、唇についた赤を舐めとりながらそう言えば、組み敷いた身体がビクリと跳ねた。怯えているのか。あの臨也が。静雄は、急に湧いた愛しさと憐れみに動かされるままに臨也の傷口に舌を這わせた。別段鋭利でもない歯で噛みちぎった為、そこは酷い傷口になっている。ゆっくりと舌を往復させると、息を詰めていた臨也から色めいた吐息が零れ始める。

「へぇ、感じてんのか」

「……っ、るさい……」

可愛くない。
静雄が傷口に無理矢理舌をねじ込むと、臨也は「あ、あ、あ……」と、意味のない言葉を零して泣き始めた。痛いのだろうか、けれど臨也の反応が自分の行動によるものだと分かっている以上、それは静雄にとってどうでも良い事でもあった。誰かに臨也が泣かされるならば面白くない。けれど原因が自分なら、それはそれで好ましい。笑うのも、泣くのも、怒るのも。臨也の全てのきっかけが自分ならばそれでいいと静雄はずっと思っていた。

「シズちゃ…いた、痛い……」

ぐすぐすと泣き始めた臨也の涙を舐めとってやる。その味が好ましくて、血に染まった舌で何度も臨也の目元を舐める。その内涙が出なくなったので、首の傷に思い切り指を立てて抉ってやれば、また声にならない悲鳴と共に涙が溢れてくる。

「……や、や……。シズちゃ、シズちゃん!」

静雄を呼ぶ声。それも好きなモノの一つであった。
常にない声を、今となってはどうして今まで聞かなかったのだろうかと不思議にすら思ってくる。もっと聞きたくて、静雄は傷口を抉るのに使っていない左手を臨也の左目に添えた。

「シズちゃん…?まさか……やめ…!おねがいだから、シズちゃ……っ、ああああああ!!!!!」

悲鳴の一つも聞きこぼさないように。静雄はうっとりと臨也を抱きしめた。痛みの為、息を荒くして揺れる身体が愛おしい。二つしかない目を潰した甲斐があると静雄は笑う。でも、目はもうダメだ。残りは一つしかないのだから、大切に愛さなくては。傷のように治るものならいいけれど、潰してしまったらもうそれはただの物体で、腐るだけ…そこまで考えて、ふと静雄は左手が握る綺麗な紅をまじまじと見つめた。このままだと腐るだけ。ならば、自分のものにしてしまおう。愛おしげに唇を寄せると、痛みに震え、泣いていた臨也が信じられないものを見る目で静雄をみつめる。丸呑みするのが勿体無くて、三度齧り付いて破片の一つすら残さず噛み砕いていく。グシュリ、と潰れ静雄の中に染み込んでいく。何とも言えない心地良さだ。

真っ赤に染めた口を拭いもせずに静雄は臨也に触れる。
すっかり抵抗しなくなったその身体は、静雄をゆっくりと迎えいれた。

「シズちゃん、シズちゃん…シズちゃん…!!!」

抵抗しないのは、すでに静雄が臨也の手を、足を折ったから。揺すられるだけの臨也の身体は、それでも恐ろしい程に静雄を煽る。臨也の全てが、静雄を惹きつけてやまないのだ。

ゴクリと、静雄は唾を飲み込こんだ。
一度味を覚えてしまってからは、あとはもう欲するだけだ。一番に目に入ったのは、静雄に蹂躙されながら白濁を零す臨也自身。舌舐めずりをする静雄に、臨也は何かを感じたのだろう。残った右の目に恐怖と、それから言い様のない愉悦を隠す事なく浮かべ、微笑んだ。


「ーーーいいよ。全部、シズちゃんのモノにして」






悪夢よどうか醒めないで
(こんな事しなくても、俺は君から逃げなかったよ)






sousaku30 no.15





title by 確かに恋だった






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