「じゃあ次に委員会を決める。まずは学級委員から…」

少し緊張した空気の中を、コンコン、というチョークの不規則な音が通り抜ける。
中学の時、私は緑化委員だった。草むしりは面倒だったけど、綺麗な花を植えるのは好きだった。
そんなことを考えながら黒板に目を走らせる。

似たような委員会はないだろうか。

「次、園芸委員。これは…校内の花壇の世話する委員会だな。希望者はいるか?」

手を上げる。衣擦れの音がやけにうるさく聞こえた。

「中西…と一人だけか?じゃあ次…」

他の委員会にくらべて面倒なことが多かったりするもんね…

結局園芸委員の男子枠は終盤まで余ってしまい、まだ決まっていない生徒が当てはめられることになった。

「じゃあ、平和島、園芸委員でいいか。」
「っす。」

興味がない、とでも言いたげな返事。
さっきの自己紹介では、周りから恐れたような視線を送られていた男の子。
私には普通の男の子にしか見えなかった。

「解散後、それぞれ今決めた委員会の集まりがあるから、教室を確認しておくように。では、解散」

先生の言葉で、緊張の糸がほどけたように教室内の空気が緩む。

ドアの方へ目を向けると、平和島くんが教室から出て行こうとしていた。

「まって!」

とっさに呼び止めてしまった。
周りにいた人の視線が必要以上に痛い。気のせいだろうか。

ええと、なにを言おうとしたんだっけ。

「も、もう教室確認したの?」


返事が遅い。
と言うか無い。

不審に思い、顔を上げると無表情のまま目だけ見開いた平和島くんが。
目が合うと同時に開かれる口。

「…もう見たけど……1−Dだった。」
「そっか、ありがとう。あ、一緒に行ってもいい?」

なんでそんな心底意外そうな顔をするんだろう。

「あぁ。」

その一言を合図に、私たちは歩き出した。
会話は無かったが、歩幅の広い平和島くんが時折私のペースに合わせてくれてる、そんな気がして。

私はこれからの委員会活動が楽しみになった。


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