19
静雄くんは一限が始まるギリギリに教室に来た。
あいさつ、自然に返せてただろうか。
授業に身が入らないまま、あっという間に昼休み。
まこちゃんとお昼を食べようと、弁当箱をあけた瞬間だった。
「菜緒!」
フタを持った私の手が止まる。
なんかこの状況、前もあったような…
扉の方へ視線をやると、そこには息を切らした静雄くんの姿が。
「ちょっといいか」
「えっ」
私の返事を待たずに、フタを持つ私の手を掴み引っ張っていく。
「ええ、ちょ…っ」
まこちゃんを見ると、心配そうにこちらを見ていた。
連れて行かれたのは裏庭。
私たち以外に人は居ないようだった。
静雄くんは足を止めると、腕を掴んだまま振り返った。
「えっと、静雄く…」
「門田から聞いた」
「え?門田…くん?」
「俺のせいでお前を危険な目に合わせちまってる」
「あ…」
私の腕を掴む静雄くんの手に少し力が入るのがわかった。
「悪い…」
「ううん、それは静雄くんのせいじゃな…いや静雄くんのせいだけど、大丈夫だよ!」
掴まれてる腕をゆらゆら揺らしながら冗談めかして笑う。
しかし静雄くんの眉間のシワは深くなる一方だった。
「じょ、冗談だよ?静雄くんは何も悪くないし、私も本当に気をつけて帰る!ていうか彼女なんて書き方されちゃって私の方が申し訳ないっていうか…」
「俺は別に…つーか、それ俺のセリフな」
なんとも言えない空気が流れ、決まりが悪そうに静雄くんが手を離す。
なんだか名残惜しい。